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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
三章

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357・行くわよ

「そうか、エリアーヌ達がそんなことに……」


 ベルカイム王城。

 第一王子クロードは、フィリップと話していた。


「ああ」


 フィリップは頷く。


 見た目は黒髪の少年だ。

 だが、その正体は精霊王である。

 齢二百は超える精霊であったが、あどけない顔つきは十歳中頃にしか見えず、彼のことを信じられない者からすると、まさか精霊王だと信じられないだろう。


「念話で連絡が入ったんだ。信頼の置ける者には話していいそうなので、君には説明したが……あまり無闇やたらに言いふらしたりはしないでほしい」

「もちろんだ」


 クロードも頷きで応える。


 そこで話し合いが終わり、フィリップが背を向けた。


「すぐに精霊の村に戻るのか?」

「そうだな」

「せっかくだから、ゆっくりしていってもいいのに……」

「やることが山積みなんだ。それに今、リンチギハムにはナイジェルとエリアーヌ、両名がいない。なにかあった時のバックアップのためにも、帰らなければならないからな」


 手を軽く振って、フィリップはその場から立ち去った。

 相変わらず、クールな男である。


「エリアーヌ達は大丈夫なのかな?」


 クロードは会議室を後にし、廊下を歩きながらぽつりと呟く。


 フィリップから聞かされた話は、驚くべきことであった。

 リンチギハムで《時の巨人》が現れ、女神祭前日が何度もループしていた。

 エリアーヌ達はループから抜け出すことが出来たが、突如現れたリュシアンに精神を奪われ、それを取り戻すためにフロストガルドに向かった──と。


(この時間軸ではないボク達は、ループから抜け出すために尽力したそうなんだがな。なにも知らなかったことが悔やまれる)


 そう思っていると、


「あら、クロード。フィリップとの話し合いは終わったの?」


 廊下の向こうから、一人の女性がクロードに歩み寄ってきた。

 レティシアである。


 彼女は元々、真の聖女だと宣い、ベルカイムを破滅に導こうとした女性である。

 しかし今となってはエリアーヌと和解し、定期的にお茶会を開くほどの仲になった。


「ついさっきな」


 クロードは表情を緩めて、そう答える。


 ──フィリップが住む精霊の村は、リンチギハムとベルカイムの国境線沿いにある。


 そのため、二国の発展を願うため、こうして話し合いの場がもたれることがある。

 先ほどもそうだったのだ。


 もっとも、軽い世間話と情報交換をするだけのつもりだったので、まさかあんなことを聞かされるとは思っていなかったが。


(フィリップには、無闇矢鱈に言いふらすなとは告げられたが……レティシアになら大丈夫だろう。彼女も、エリアーヌに深く関わりがある)


 クロードは周りに人がいないことを確認してから、こう口を開いた。


「フィリップから、ある話を聞かされてな。実は……」



 エリアーヌ達が現在置かれている状況を、レティシアに説明する。



 すると。


「はあ!? 少人数でフロストガルドに向かっているですって!? あそこって、一年中猛吹雪に包まれている土地で、人が近付こうともしない“死都”じゃない!」


 レティシアは目を見開いて、そう声を大にした。


「ちょ、ちょっと、レティシア……もう少し、声をひそめてくれるかな? 誰かに聞かれるかもしれないし……」

「しかも、リュシアンが元凶だって……わたしにも言わず……」


 ギリギリとレティシアは歯軋りをし、やがて覚悟を決めた顔つきになって、こう声を発する。


「……行くわよ」

「え?」

「わたし達も、フロストガルドに行くって言ってんのよ! エリアーヌにだけ、危ない目に遭わせるわけにはいかないわ!」


 そう言って、レティシアは王城の外に向かう。

 その足取りは大股で、何人たりとも近寄れない圧を感じた。


「ま、待ってくれ! 急すぎるよ。迷惑をかけられないと思ったから、エリアーヌはボク達に言わなかったんだろうし……」

「だったら、なに? あんたはエリアーヌを助けたくないの? 返しきれない恩があるのに?」

「それは……」


 そう言われると苦しいところがある。


「立地的には、フロストガルドはベルカイムからの方が近いわ。今から馬車をかっ飛ばせば、エリアーヌ達に追いつけるでしょ」

「それはそうだが……やっぱ、やめておいた方がいいんじゃ……」

「ああ! もうごちゃごちゃ言わない! 怖いって言うなら、置いていくわよ!」

「わ、分かったって! だから置いてかないでくれ!」


 急いでレティシアの後を追いかけるクロード。


 ……危険はある。

 フロストガルドはベルカイムの王子クロードであっても、ほとんど情報が入ってこない土地だ。

 そうでなくても、リュシアンだとかいう少年は、なかなかの曲者なのである。生きて帰ってこれる保証はない。


 だが。


(ボクがレティシアを一人で、そんなところに向かわせるわけないじゃないか……!)


 不安はあったものの、クロード達もフロストガルドに急いで向かうのであった。

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