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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
三章

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354・失われた輝き

「──祭りはまだ終わっていないよ」


 ぐにゃあ──。

 いきなり空間が歪んだかと思えば、中から銀髪の少年が現れました。


「え……」


 突然の光景に、この場にいる誰もがすぐに反応出来ません。


 たった一人を除いては。


「リュシアン──っ!」


 ナイジェルが彼──リュシアンの名前を呼びます。


「祭りは楽しんでいるかな? だけど、祭りはここからだ。いわば、今まではただの前夜祭。本当の祭りは──」


 そう言って、リュシアンは右手に氷の剣を錬成します。


 ドグラスとファーヴ、シキもすぐに臨戦体制に移りますが、ただでさえ虚をつかれた形なのです。間に合いません。


 リュシアンはナイジェルに向かって、剣を一閃します。


「くっ……!」


 しかしナイジェルは咄嗟に剣を抜き、リュシアンからの攻撃を防ぎます。


()()()()()()()()()()()


 攻撃が防がれたというのに、リュシアンはあっさりと剣を手放します。


 右手に魔力を込め、そして──。




 ナイジェルの胸を貫きました。




「く……はっ……」


 ナイジェルの口から苦悶の声が漏れます。


「ナイジェル──」


 手を伸ばし、私は彼のもとへ駆け出します。

 ゆっくりと床にナイジェルが倒れていく光景が、やけにスローモーションに見えました。


「ふう、これで目的達成か」


 リュシアンがナイジェルの胸から手を引き抜き、息を吐きます。


「じゃあね、みんな。次に会う時は、祭りも終わっているだろう」

「待て!」


 ドグラスがすぐさまリュシアンを捕まえようとしますが、その手は空を切りました。


 まるで幻のようにリュシアンの姿がゆらめき、最終的に完全に消えてしまいました。


「ナ、ナイジェル──っ!」


 倒れていくナイジェルを、私はすかさず支えます。

 胸を貫かれたというのに、不思議なことに血の一滴も流れていません。

 しかし、その瞼は重く閉じられたまま。


 ナイジェルの右腕が力をなくしたように、私の胸元からだらんと垂れ下がります。


 その右手に嵌められている指輪は──すっかり輝きを失っていました。






 ◆ ◆



「ここは……?」


 ゆっくりと目を開ける。


 ここは……薄暗い一室のようだ。


 室内は狭いが、壁や床材から察するに、そう粗末な場所ではないらしい。まるでお城の一室である。


 そんな場所で、僕──ナイジェルは両手を後ろで縛られ、椅子に座らされていた。



「──お目覚めかな?」



 少年の声。

 暗がりの中から、リュシアンが姿を現した。


「……そうか。そういうことだったんだね」


 彼の顔を見て、確信に至る。


「君は、《時の巨人》を守っていた結界に亀裂を入れた。その目的とは終わらない一日の中で、僕達が《時の巨人》の結界を完全に破ることだった」

「…………」

「だけど、あくまでそれは過程に過ぎない。君の真の目的は、その先──()()()()()()

「正解」


 リュシアンがにっこりと笑う。


「今から僕がしようとすることを成すためには、どうしても《時の巨人》の力が必要だった。《時の巨人》は倒されてしまったけど、十分にその力に触れることが出来た。これでやっと前に進める」

「今から君がしようとしていること……?」


 問いかけるが、リュシアンから答えは返ってこなかった。


 ……思えば、おかしいことばかりだった。


 リュシアンの真の狙いが『《時の巨人》の解放』だとしたら、いざ結界が破られようとしたタイミングで、僕達の前に姿を現す必要がない。

 せめて、《時の巨人》が解放されてから、ゆっくりと顔を出せばよかったからだ。


 だが、彼はそうしなかった。


 あれはいわば、自分が舞台から降り、僕達の意識を逸らすことにあったのだろう。

 ドグラスからリュシアンは自壊したと聞かされ、まんまと油断してしまった。


 ──全てはこの時のため。


《時の巨人》の力に触れ、僕をここに攫うことだったんだ。


「……何者なんだ」


 同じことを問いかけても答えは返ってこないと考えた僕は、質問の矛先を変える。


「ドグラスからは間違いなく『死んだ』と聞かされたけど、そうじゃなかった。それに、君も一日のループから逃れられていたよね? 君は一体何者なんだい?」

「それは、これから分かる」


 そう言って、リュシアンは右手をかざす。

 その手には、光の球があった。


「これは君達が《時の巨人》を解き放ってくれたおかげで手に入れた、時に干渉する力。これを使って、今から君には、あるものを見てもらう」

「あるもの?」

「過去のお話だ。()()()が、雪の監獄に閉じ込められるようになった前──そんな国で暮らす、一人の王子とその友達の話。抗えない運命を前にして、君は立ち上がることを諦めるだろう。そのために僕は、君をここに連れてきた」


 光の球を携えたリュシアンの右手が、ゆっくりと僕に近付く。


 なんとか逃げようとする。

 だが、両手を縛られているせいで体を上手く動かせなかった。


 そのまま視界は光の白で覆われ──次の瞬間、僕はこことは違う空間に誘われるのであった。







      ──前編『終わらない一日と失われた輝き』完。



          後編『眠れる王子と白銀の誓い』に続く──。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

『真の聖女』2027年アニメ化決定を祝いましての、一挙公開となりました。

前編の『終わらない一日と失われた輝き』が終わり、後編の『眠れる王子と白銀の誓い』に続きます。

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
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