353・終わらない一日
その後。
私達はシルヴィ達と合流し、現状の把握に努めました。
どうやら、ドグラスとファーヴは《時の巨人》が現れたことすら記憶から消え、なにが起こったのか分からないみたい。
《時の巨人》が消滅することによって時の歪み──つまり矛盾が消え、接合性が取れるように修復されたのでしょうか?
その後も祭りを回りながら異変がないか探りましたが、特に問題もありませんでした。
私達はあらためて祭りを楽しみ……そして夜を迎え、祭りは無事に閉幕となったのです。
「……色々ありましたが、祭りが無事に終わってよかったですね」
王城に帰り。
私は、ナイジェルとドグラス。ファーヴとシルヴィの五人で会議室に集まり、今回の出来事を話し合っていました。
「そうだね。普通の人は昨日も含めて、たった二日間だったけど……僕達は違う。なんだか、もっと長い時を過ごしたみたいで疲れたよ」
ナイジェルが苦笑します。
「魔王……お前達はシキと呼んでいたか? シキが助けてくれたんだったな」
「はい」
ファーヴの質問に、首を縦に振ります。
シキにもお礼を言わなければなりませんが、彼女は路地裏で別れた後、忽然と姿を消してしまいました。
祭りの最中もシキを探しましたが、見つけられずじまい。
「ナイジェルのその指輪……それもシキから、頂いたんですよね?」
と、シルヴィがナイジェルの指に嵌められている指輪に視線を移します。
頂いた当初は真っ黒に染まった指輪でしたが、今は控えめながらも光を放っています。
ナイジェルは手を軽く掲げて、こう言います。
「うん。きっと、僕の中の力とシキの力が合わさったから、こうして光を放っているんだろう。シキにもお礼を伝えなくっちゃね」
「シキはどこに行ったのだ?」
ドグラスが腕を組んで、問います。
「さあ……分かりませんね。彼女のことだから無事だと信じたいんですが……」
「妾がどうした?」
と──話し合っている途中、急に会議室に一人の女性が入っていました。
頭に仮面をつけ、右手でリンゴ串が持っています。
「シ、シキ!」
突然現れた彼女──シキを見て、私は思わず声を大にしてしまいます。
「どうやって、ここに入って……って、今はそれよりも──今までどこにいたんですか!? 心配したんですよ!」
「うむ、祭りを楽しんでいたのだ。せっかくの人間の祭りだからな。楽しまなければ、損だろう?」
そう言って、シキ豪快にリンゴ串に齧り付きます。
彼女の平気そうな顔を見て、体の力が一気に抜けていくのを感じました。
「怪我はないのかい?」
「怪我? あんな雑魚どもに、妾が遅れを取るわけがなかろう。いくら、本来の力を取り戻していなくても……な」
なにをバカなことを──と言わんばかりにきょとんとするシキ。
……突然現れたのには驚きましたが、無事なシキが確認出来てなにより。
あらためて私はシキの顔を真っ直ぐ見つめて、頭を下げます。
「シキ──本当にありがとうございました。あなたのおかげで、《時の巨人》を倒し、時空の崩壊を防げました」
「礼などいらぬ。世界が崩壊してしまえば、妾も困るからな。だが、今の妾は《時の巨人》を倒せず、貴様らを利用しただけだ」
なんでもないように答えるシキ。
もう……っ! 素直じゃないんですから。
ですが、そういうところもシキらしいと思いました。
「──私達は初めましてですね。シルヴィと申します」
「ファーヴだ」
「ん……? そっちのドラゴンはともかく、女の方はエリアーヌと似た魔力を感じるな。力は大分弱いが」
「分かりますか?」
「無論だ。今までさんざん、聖女には苦しめられてきたからな。始まりの聖女やエリアーヌがいなければ、今頃とっくに妾なりの世界平和を実現させていたものの……」
ぶつぶつと呟くシキ。
……ファーヴのことも、すぐに『ドラゴン』と見抜いていましたし、さすがの洞察力です。
「それで……どうして、汝はここにきた?」
私達の様子を見守っていたドグラスが、そう問いの言葉を投げかけます。
「まさか、我らと話したくて来たという性格でもないであろう」
「ああ、そうだった」
思い出したように。
シキは表情を真剣なものとし、こう口を動かします。
「言い忘れていたことがあってな」
「言い忘れていたこと?」
「うむ、リュシアンのことだ」
リュシアン──。
魔王信教の教皇でありながら、今回のことを引き起こした元凶。
今となっては亡き人物となってしまいましたが……シキは一体なにを言うつもりでしょうか?
「とはいえ、これは妾の推測だ。ヤツは……」
そうシキが言葉を続けようとした時でした。
「──祭りはまだ終わっていないよ」





