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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
三章

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352・世界平和という夢

 私達は再び、中央広場に戻ります。

 そこでは変わらず、《時の巨人》が我が物顔で闊歩していました。


「踏ん張りどころだね」

「ここで決着を着けましょう」

「もちろん」


 神剣を構えるナイジェル。

 ナイジェルは私に視線で合図をしてから、空高く跳躍します。

 風を切り裂き、ぐんぐんと《時の巨人》に向かいました。



 ──オオオオオォォォォオオオンッ!



《時の巨人》が大きく哭いたかと思うと、次の瞬間にナイジェルが空中で静止。

 神剣を振り上げたまま固まるナイジェルに、《時の巨人》の右腕が迫ります。


 払われた右腕がナイジェルに──。


「やっぱりね」


 しかし、右腕がナイジェルに直撃する寸前、不可視の壁によって弾かれます。

 結界です。


《時の巨人》が時を止めてくるなら、それを読んで、あらかじめ結界を張ればいいのです!


 ナイジェルは払われた右腕に器用に着地し、勢いをつけてその上を疾駆します。


 目標は──《時の巨人》の胴体。

 目と鼻の先まで接近し、ナイジェルが再び神剣を振り上げます。


 しかし。


「くっ……時の亡霊か!」


 時の亡霊が《時の巨人》を守るように立ちはだかり、ナイジェルを襲います。

 ナイジェルは神剣で時の亡霊を斬り払いますが、バランスを崩し、《時の巨人》の右腕から振り落とされてしまいました。


「……一度目で、そう上手くはいかないか」


 地面に着地し、ナイジェルは悔しそうに声を零します。


「だけど、一度目で上手くいかないなら、何度でも繰り返せばいいだけだ」

「そうです。いつかは《時の巨人》に攻撃が届くはずです」


 ──シキから託された指輪は、未だ効果を現していません。

 深い黒色をした指輪は、静寂を保っていました。


「シキからもらった指輪は……変化なしか。一体、『最後の一押し』ってなんなんだろうか」

「今は戦いながら見つけるしかないでしょう。ミツハちゃんの時のことを考えると、想いの強さが鍵になってくると思うんですが……」

「今は分からないね。とはいえ、攻撃の手を緩めるわけにはいかない。エリアーヌ、僕にもう一度結界を──」


 ナイジェルから言われ、私はすぐに彼に結界を張ろうとしますが……。


「え……」



 目の前に《時の巨人》の拳が迫っていました。



「くっ……!」


 すかさずナイジェルが私を庇います。

 ですが、少し遅かった。

《時の巨人》の拳の一撃によって、私達は宙に放り出されます。


 反射的に結界を張りましたが、さすがに衝撃のほとんどを吸収しきれません。

 私はナイジェルと共に背中から強く地面に叩きつけられます。


「ナ、ナイジェル……ご無事ですか」

「う、うん。なんとかね」


 ふらふらと立ち上がりながら、なんとか私達はお互いの無事を確認します。


 治癒魔法をかけたおかげでなんとか意識を保つことが出来ますが、正直立っているだけで精一杯。


 そんな私達を、《時の巨人》は嘲笑うかのように見下ろしていました。


「結界を……張ろうとしたよね?」

「は、はい。ですが、その瞬間に《時の巨人》の拳が迫っていて。まさか──」



《時の巨人》は、私とナイジェルの時を同時に止めたのです。



 今まで、《時の巨人》は私達のどちらか片方しか、時を止めることが出来ませんでした。


 ですが、現世に解き放たれて、少しずつ力を取り戻したのでしょう。

 私達でも抵抗出来ないくらい、時の歪みが酷くなっているのかもしれません。


 私達はその場で立ち尽くしてしまいます。


「……諦めるわけにはいかない」


 しかし、ナイジェルの瞳に込められた光は顕在。


「僕は……世界平和を実現するんだ! そのためなら何度傷つけられても、立ち上がる! こんなところで立ち止まるわけにはいかない!」


 力強く叫びます。

 その叫びは、王都中に響き渡るようでした。


 次の瞬間でした。



 ナイジェルの指に嵌められている指輪が、光を放ちます。



「これは……」


 神々しい光を前に、私はそう声を零します。



『その指輪に、妾の力を込めた。とはいえ、不可前なものだ。効果は限定的なものであろうし、目覚めるための最後の一押しは貴様らにしか出来ん』



 シキはあの時、そう言っていました。

 最後の一押しとは──ナイジェルが『世界平和』の夢を、さらに強く願うこと──だったのでしょうか。


 鮮烈な光は《時の巨人》に降り注ぎ、その周りに浮遊していた時の亡霊を消滅させていきます。


「ナイジェル」

「ああ……今ならなんとかなるかもしれない」


 ナイジェルが両手で神剣を握ります。


 そのまま、《時の巨人》に向かって疾駆。

 跳躍し、《時の巨人》に斬りかかります。


 ──今までならここで時を止められ、攻撃は《時の巨人》に届きませんでした。


 しかし。


「無駄だよ」



 ナイジェルの神剣は《時の巨人》に届き、大きく傷を付けました。



《時の巨人》が咆哮を上げ、痛みから逃れるように、大きく体をひねります。


「届きました……!」


 私の隣に着地したナイジェルに、私はそう言います。


「……うん。シキの言った通りだった。この指輪は”終末の種”に抗う力がある。今なら、僕の剣も《時の巨人》に届く」


《時の巨人》はよろめき、頭を抱えて、その場から逃走を図ろうとします。


 ですが、その大きな体が仇となったのか、動き自体は遅いものでした。


「じゃあ、エリアーヌ。幕引きにしてくるよ」

「どうか、明日を取り戻してください」


 お互い頷き合って、ナイジェルは再び《時の巨人》に向かっていきます。


「君が明日を望まなくても、僕達は違う。明日が今日よりもきっといい日になると思って、日々前に進んでいるのだ。僕達の歩みを止めることは、何人たりとも許さない!」


 そしてナイジェルは神剣を大きく振りかぶり、《時の巨人》を両断したのでした。




 斬り裂かれた《時の巨人》が消滅していきます。

 光の粒子が天高く舞い上がり、まるで雪のように私達に降り注ぎます。


「終わった……ね」

「はい」


 戻ってきたナイジェルに、私はそう頷きます。


「これで時の歪みは元に戻るのかな?」

「おそらく。シルヴィとシキの言っていることなら……」


 その瞬間、周囲の風景が真っ白に染め上げられます。


 視界が慣れてきた頃には、目の前がいつものリンチギハムの街並みに変わっていました。


 人々は笑い合い、心から祭りを楽しんでいるようです。


「ああ……よかった。戻った──」


 肩の力が抜けます。


《時の巨人》を倒すことによって時の歪みが修復され、元の状態に戻ったのでしょう。

 私はナイジェルと顔を合わせて笑います。


「ナ、ナイジェル!?」


 そうしていると──不意に声がかけられ、顔を向けます。


 視線の先には、変装した先代国王の姿がありました。


「先代国王陛下? なにをされているんですか?」

「う、うむ。アドルフに追っかけられて、逃げておったのだ。ヤツめ、護衛は必要ないと言っているのに……」


 ぶつぶつと文句を言う先代国王。


 しかし一転、表情を切羽詰まったものとして。


「そんなことより──お主らは、なにをしておったのだ!? ボロボロではないか! なにがあった?」

「いえ……なにもありませんでしたよ」


 先代国王に、ナイジェルが笑顔で答えます。


「そう……なにもなかった、とするのがいいに決まっています。だから父上、気にせず祭りを楽しんでください。今日はそのための日なんですから」

「そうか……?」


 先代国王が首をかしげます。


 そんな先代国王を見ていたら、勝利の実感が徐々に湧いてくるのでした。

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
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