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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
三章

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349・偽の聖女であるお前はもう必要ない!

 え……どうして?

 二人は同じやり取りを……。


「これは……」


 ナイジェルも疑問に思っているのか、唖然と二人の様子を眺めます。


 次の瞬間。



「ガハハ! どうした、ファーヴ。恋人の前では、随分と恭しいのだな。汝のそういう顔を見るのは、なかなかない」

「うるさい」



 ──先ほどまで街の中にいたはずなのに場所が変わって、私は何故か王城の食堂にいました。


「な……んで……?」


 いつの間にか持っていたフォークとナイフを、床に落としてしまいます。


「ん? どうした、エリアーヌ。そのような顔をして」

「もしかして、体調が悪くなったのか? 昨日の疲れが残っているなら、君だけでも休むべきだ」


 唖然とする私に対して、ドグラスとファーヴが心配そうに声をかけてくれます。


 ですが、その光景も一瞬。

 次から次へと、周囲の風景が変わっていきます。



「そうか──ならば、妾はこの道の先を貴様に託す」



 ベルカイム王城を模したであろう、魔界の城内。

 地面に横たわったシキがふっと笑みを浮かべ、ナイジェルに言葉をかけます。



「不死身など不要っ! ここからは純粋な力で、貴様らを叩きのめしてやろう!」



 竜島。

 不死身の力を絶たれた長命竜アルターが、最後の力を振り絞って、私達に立ち向かいます。



「クロード、愛してるわ」



 純白のウェディングドレスに身を包んだレティシアが、クロードと優しいキスを交わします。

 さらに《白の蛇》……ベルカイムでの戦い……上級魔族バルトゥル……次々と過去の光景に立ち合います。


 これは……時が巻き戻っている?

 だとしたら、どうして?


 混乱が治らない中、いつの間にか私はベルカイム王城の玉座の間に立ち、クロードにこう告げられます。




「エリアーヌ、偽の聖女であるお前はもう必要ない!」




 国外追放と婚約破棄──。


 クロードから宣言され、頭に雷撃が落ちたような衝撃が走ります。


 周囲の風景がバラバラになり、次の瞬間には最初の場面に戻っていました。


「エリアーヌ……もしかして君も、同じ光景を?」

「……おそらく」


 戸惑いの表情を浮かべるナイジェルに、私はそう頷きます。


「まるで夢の中のように、過去の光景に立ち会っていました。クロードに国外追放と婚約を告げられた瞬間……元に戻って」

「僕も同じようなものだよ。もっとも、君とは違って、唐突にここに戻ってきたんだけどね」


 未だになにが起こったか分からないのでしょう、ナイジェルの声も震えます。


 そしてそれは、私達二人だけではありませんでした。


「私も……です」

「シルヴィもですか?」

「はい。もっとも、すぐに視界が闇に覆われ、なにも見えなくなったんですけれどね。まるで時の牢獄の中に戻ったみたいでした」


 シルヴィが頭を押さえて、その場でふらつきます。


「おーい」


 疑問に感じていると、向こうの方からまたもやドグラスとファーヴがやってきます。


「旨いものを見つけたぞ。ファーヴの恋人──シルヴィといったな。汝もそれだけ細いし、スタミナを付けないといけないだろう。そのための肉串だ」

「ふっ、ドグラスもまだまだだな。シルヴィは肉料理があまり得意ではないのだ。こういったリンゴ串のような甘いものの方が好んでいる」


 そして私達の前で、また同じやり取りを……。

 これでは、まるで……。


「時がループしているみたいではないですか!」


 その結論に達したのと同時でした。



 ──ズシーン、ズシーン。



 大きな足音と共に、街全体が震えます。


「……っ! 見ろ。なんだあれは!」


 ドグラスが上空を指さして、そう叫びます。



 ──それは、空を覆い隠すほどの巨人でした。



 全長は天にも届かんとするばかり。

 昨日に時計塔の前で見た、時の亡霊の集合体も十分大きかったですが……この巨人と比べると、ただの小人です。


 突如現れた巨人はゆっくりと地上にいる人々を見据えます。

 周囲に人々の悲鳴が谺しました。


「ちっ……せっかく楽しい祭りだというのに、敵襲か」

「ドグラス、俺達ですぐに対処するぞ。祭りを中止させるわけにはいかん」


 ドグラスとファーヴがすぐに巨人に立ち向かおうとしますが、


「──うおっ!?」


 立ちくらみがしたのか、地面に膝を突きます。


「な、なんだ、これは……急に立っていられなくなって……」

「それだけではない。どんどんと……記憶がなくなっていく。どうして、俺がここにいるのかもあやふやで……自分という存在も消えてなくなりそうで……」


 異変はドグラス達二人だけではありません。

 周囲の風景も、次から次へと様変わりしていきます。

 まるで、高所から突き落とされたような浮遊感。


 過去、未来──そして現在すらも曖昧模糊となり、この世界が壊れようとしました。



「──ダメっ!」



 しかしシルヴィの声が聞こえたかと思うと、次々と移ろいでいた世界が停止します。


 地面に膝を突いたドグラスとファーヴも、そのままの体勢で固まっています。


 そして彼ら二人だけではなく、周囲の人──そして風景すらも、完全に止まっているようでした。


「さっきからなにが起こっているんだい……?」


 これにはさすがのナイジェルも理解が追いつかないのか、声を震わせます。


「エリアー……ヌ……ナイジェ……ル。聞いてください」


 そんな中、シルヴィは手をかざして、必死に声を絞り出します。


「かつて……時の聖女と呼ばれた私だからこそ、分かります……今は……時間がめちゃくちゃになっているような状態……」

「どうして、そんなことが?」

「力の源流はあそこから……おそらく……あの巨人が原因です。力が暴走し……時空が不安定な状態になっています……」


 そう言って、シルヴィは震える手で巨人の方を指します。

 そこには変わらず、天に届かんとするばかりの巨人が立ちはだかっています。


「時空が不安定な状態になっている……なるほど。だから過去に巻き戻ったり、めちゃくちゃなことになっていたんだね」


 神妙な面持ちでナイジェルが口にします。


「このままでは、どうなりますか?」

「どうなるかは……定かではありません。ですが、このままではきっと時の歪みに呑み込まれ……世界が崩壊します」


 世界が崩壊する──。


 とんでもないことを聞かされ、私とナイジェルは言葉に詰まります。


「あの巨人を倒せば……暴走は止まると思います。急いでください……私の力でなんとか拮抗を保っていますが……すぐに時の歪みは再開するでしょう。次に歪みが生じれば……その時が、世界の終わりです……」

「エリアーヌ! 行こう!」

「はい!」


 私達は急いで、駆け出します。


「シルヴィ! すぐに戻ってきます! なので、今はなんとか耐えてください!」


 振り向いてシルヴィに声をかけますが、彼女は力を発することで精一杯なのか、言葉ではなく微笑みで返しました。


 突如、現れた巨人。

 この時の歪みも、巨人が原因だとシルヴィは言いますが……どうして、こんなことになっているんでしょう?

 私達は、ループする一日から抜け出せたのでは?


 未だ答えが出ず、私は巨人がいる足元へ向かいました。

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
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