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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
三章

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348・楽しいお祭り

 王城を出て、私達は祭りを練り歩きます。


「楽しいお祭りですね〜」


 祭りの風景を眺めて、シルヴィがほんわかと言います。


「シルヴィが暮らしていた時代──二百年前も、このような祭りはあったんですか?」

「はい、もちろんです。とはいえ、当時の世界でこれほど人が多い場所は、なかなかなかったと思いますが」


 とシルヴィが頬に手を当てて、そう答えます。


「この二百年間で、随分と技術や医療も発達したからでしょう。あの糸に吊り下げられているものはなんですか?」

「あれは魔石ランタンだね」


 魔石ランタンを見上げて質問するシルヴィに、ナイジェルがこう答えます。


「魔石を燃料として、灯りが点くんだ。そのおかげで夜になっても、街中は明るく照らされる」

「まあ……!」


 シルヴィが驚きで目を見開きます。


「素晴らしいです。便利なものがあるんですね〜。見るもの全てが新鮮です」

「あっ、ナイジェル陛下とエリアーヌ王妃!」


 話しながら歩いていると、不意に声をかけられます。


「あなたは……ドーナッツ屋の店主ですか」

「おや、私のことを知っておられるのですか。エリアーヌ王妃に名前を覚えられていて、光栄です」


 ドーナッツ屋の店主が嬉しそうに頬を綻ばせます。


 ループされる前にはここでドーナッツを分けてもらいましたが、この時間軸ではお会いしたことがなかったですか。

 街中でナンパをされ、先代国王に助けてもらって、そのまま魔法研究所に向かったのでした。


「お近づきの印に、どうか店のドーナッツを食べてくださいませ。人数分用意します。もちろん、お代はいりません」

「どうしよっか?」

「ぜひ、食べてみたいです……! この時代のお菓子に興味がありますので」


 ナイジェルがみんなに視線を送ると、シルヴィがきらーんと目を輝かせました。


 私達は店主の好意に甘えて、紙包みに入ったドーナッツを受け取ります。


「……っ! 美味しい!」

「俺は一度体験しているとはいえ、やはりこの時代の料理はどれも美味しいな。癖になる味だ」


 シルヴィとファーヴが並んで、美味しそうにドーナッツを食べます。

 その光景は微笑ましく、二人の事情を知っていなければ、ただの仲睦まじいカップルに見えていたでしょう。


「ファーヴのやつめ、幸せそうだな」

「ですね」


 ドグラスの言葉に、私はそう頷きます。


 みんなでドーナッツを食べ終わり、ドグラスが「よし」と声を零して、ファーヴのところへ向かいます。


「ファーヴよ、まだまだ祭りは始まったばかりだ。我ら二人で、旨い出店の料理を探そうではないか」

「おっ、それは面白そうだな」

「せっかくだから、どちらがより旨い料理をエリアーヌ達にプレゼント出来るか、勝負しよう。どうだ?」

「臨むところだ」


 ファーヴがふっと笑いかけドグラスの提案に乗り、二人は祭りの人混みの中に消えていきます。

 まるで遊び場まで走っていく、子どものようです。


「ファーヴが、あんな顔をしているのを見るのは初めてかもしれません。私といる時は、よく見せてくれるんですけれどね」

「そうなんですか?」


 問いかけると、シルヴィは「ええ」と返事をします。


「昔のファーヴは、いつも影があるような人物でした。物事に興味がなく、いつ死んでもいいと思っているような……そんな彼を、私は見過ごせなかったんです」

「きっと君と出会ってから、変わったんだよ」


 昔話に思いを馳せるシルヴィに、ナイジェルがそう言葉をかけます。


「人は守るものが出来た時、強くなれる。ファーヴにとって、君がそういう存在だっただけさ」

「そうです。それに昔、ファーヴも言っていました。昔の自分は弱く、自ら命を絶とうとした……と。そんなファーヴが変われたのは、シルヴィのおかげです」

「……ありがとうございます」


 噛み締めるように言うシルヴィ。


 そして両腕を広げ、風を全身で感じるように上半身を逸らします。


「ああ──空がキレイ。本当に私は、この世界に戻ってこられたんですね。なんだか、まだ実感が湧かないです」

「実感なら、今からゆっくり湧いてきますよ」


 シルヴィにそう微笑みかけます。


「それに……時間ならたっぷりあります。急ぐ必要はありません」

「そうかもしれませんね」

「君とファーヴはこれから、どうするつもりだい? 君達がいいなら、しばらく王城で暮らしてもらってもいいけど……」

「ありがとうございます。ですが──」


 とナイジェルに対し、シルヴィは首を横に振ります。


「ファーヴと世界中を旅してみようと思っているんです。聖女の役割からも解放されましたし、これからの人生は自由に生きようかと」

「いいですね! 私も応援しますよ。特にアマツはオススメです。料理も美味しくて、ミツハちゃんっていう可愛いお姫様もいるんです」


 自分のことのように、つい楽しんでしまいます。

 今まで、シルヴィは昨日も今日もないような場所で、永劫の時を過ごしていました。


 ですが、今は違います。

 シルヴィとファーヴには未来があるのです。


 元の時代じゃないのは思うところがあるのかもしれないけれど、せめてお二人には今の時代を楽しんでほしいと思いました。


「アマツ……ですか。二百年前も聞いたことがあります。エリアーヌが言うなら、次はそこに──」

「おーい」


 シルヴィとこれからのことを話し合っていると、向こうの方からドグラスとファーヴが駆け寄ってきました。


 ドグラスの手には肉串。ファーヴの手にはリンゴ串が。


「旨いものを見つけたぞ。ファーヴの恋人──シルヴィといったな。汝もそれだけ細いし、スタミナを付けないといけないだろう。そのための肉串だ」

「ふっ、ドグラスもまだまだだな。シルヴィは肉料理があまり得意ではないのだ。こういったリンゴ串のような甘いものの方が好んでいる」

「分かっていないのは汝の方だ、ファーヴ。そのような軟弱なお菓子を食べて、なにが楽しい? せっかくの祭りなのだ。普段では食べないような料理を食べてこそ、祭りの醍醐味だろう」


 ドグラスとファーヴが睨み合い、火花を迸らせます。

 二人のそんなやり取りを見て、私とシルヴィはついくすりと笑ってしまいました。


「まあまあ、お二つとも食べてもらえばいいではないですか」

「そうです。朝ごはんは食べたとはいえ、まだお腹がペコペコですからね。まずはリンゴ串から……」


 とシルヴィが手を伸ばしかけた──その時でした。


「えっ……」


 一瞬眩暈がして、ふらつきます。


「おかしいですね。まだ魔力が回復していないんでしょうか」


 一晩寝れば完全に治るはずなのに……不思議に思いました。


 あらためて、ドグラスの方へ視線を移すと、



「おーい」



 ドグラスとファーヴが手を振って、()()()()()()()()()()()()()


 二人の手には、先ほどの肉串とリンゴ串が。


「旨いものを見つけたぞ。ファーヴの恋人──シルヴィといったな。汝もそれだけ細いし、スタミナを付けないといけないだろう。そのための肉串だ」

「ふっ、ドグラスもまだまだだな。シルヴィは肉料理があまり得意ではないのだ。こういったリンゴ串のような甘いものの方が好んでいる」


 またもや、二人は言い合いを始めます。

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
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