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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
三章

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347・幸せなひととき

 ループから無事に抜け出せた私達はひとまず場所を移し、食堂に集まることにしました。



「お待ちどおさま!」



 そう言って、食堂のテーブルに料理が載ったお皿を並べていきます。


 チーズオムレットです。


「おお! 旨そうだな!」


 席に着いたドグラスがチーズオムレットを見て、じゅるりと涎を垂らします。


「ふふふ、そうでしょう。()()()()にも、手伝ってもらいましたから」


 腰に手を当てて、ドヤ顔で答えます。


「エリアーヌは料理が上手ですね。料理をするのは久しぶりですが……足を引っ張らないだけで、精一杯でした」


 シルヴィが控えめに笑います。


 ──起きてからまず、私達は朝食を摂ることにしたのです。


 シルヴィにも手伝ってもらって、チーズオムレットを作りました。


 彼女は現在、淡い青色のエプロンを身につけています。

 その姿はとても可憐で、ファーヴが惚れるのも納得です。


「……思えば、シルヴィを救い出すために長命竜アルターに向かう前にも、同じものを作ってもらったな。思い出の味だ」


 しみじみとファーヴが口にします。


「それにしてもエリアーヌ、随分とシルヴィさんと仲良くなったみたいだね。呼び方も変わってる」

「はい」


 ナイジェルの言葉に、私は頷きます。


 当初は彼女のことを、『シルヴィさん』と呼んでいました。

 ですが、それでは距離を感じます。


 なのでチーズオムレットを一緒に作りながら、『シルヴィ』と呼ぶことに決めました。

 彼女も笑顔で喜んでくれて、一気に距離が縮まったように感じます。


「それにシルヴィとは友達になるって、約束しましたから」

「そうです。友達相手に“さん”付けなんて、おかしいでしょう?」


 シルヴィもくすくすと笑います。


「さあさあ、料理が冷めないうちに、どうぞお召し上がりください」

「じゃあ、早速……」


 ナイジェルがフォークとナイフを手に取って、チーズオムレットを口に入れます。

 ドグラスとファーヴもその後に続きます。


 すると……。


「美味しい!」


 ナイジェルは目を輝かせ。


「「旨い!」」


 ドグラスとファーヴは、そう声を揃えました。


「よかったです」


 ほっと胸を撫で下ろします。


「何度食べても、エリアーヌが作った料理は美味しいね。朝から元気が出るよ」

「だが、いつも食べるチーズオムレットとは少し味が違うような? 素朴な味がする」

「これは……シルヴィがいつも使ってた調味料だ。ああ──懐かしい。この料理を食べるだけでも、元の世界に戻ってきたんだと実感するよ」


 そう会話を交わしながら、三人は夢中になってチーズオムレットを食べていきます。


「エリアーヌ、私達も食べましょうよ。お腹がペコペコです」

「そうですね」


 私もシルヴィと席に着きます。

 私はナイジェルの隣。シルヴィはファーヴの隣です。

 そのまま、チーズオムレットに口を付けます。


 ……美味しい!


 卵の優しい味が、しみじみと体に染み渡っていきます。

 チーズも舌の上でとろけ、シルヴィが勧めてくれた調味料も味に合っています。


 やっぱり、待ち望んでいた“明日”はいいものですね。

 こうしてみんなで食卓を囲って、楽しくご飯を食べることが出来るようになったのも、ループを抜け出せたから。


 素直にそう思いました。


「あら、ファーヴ」


 シルヴィがふと気付いて、隣に座っているファーヴに手を伸ばします。


「口元にチーズが付いていますよ」

「ぬ」


 ハンカチで口元を拭かれ、ファーヴがきょとんとします。


「ありがとう、シルヴィ。君達が作ってくれた料理が美味しすぎて、口元が汚れていたことにも気が付かなかったよ」

「どういたしまして」


 シルヴィが笑顔で答えます。


「ガハハ! どうした、ファーヴ。恋人の前では、随分と恭しいのだな。汝のそういう顔を見るのは、なかなかにない」

「うるさい」


 茶化すドグラスに、ファーヴが苦い顔を作ります。


「そういうお前こそ、パートナーはいないのか? お前ほどの器量の男だ。すぐに相手が見つかると思うが……」

「我は理想の壁が高い男なのだ。今は恋人を必要とせぬ」


 何故だか誇らしげにドグラスが胸を張ります。


 ですが、すぐに優しい顔つきになって。


「……ファーヴ。本当によかったな。恋人とまた、こういう日々を過ごすことが出来て」

「……っ!」


 ファーヴが声に詰まります。


「いきなり、どうした。お前らしくないではないか」

「なあに。我も色々と思うところがあったのだ。汝は裏切り者と罵られようと二百年以上も、たった一人の女を好きでいたのだからな。我にはそういう相手がおらぬ」


 そう言って、ドグラスはファーヴから視線を外し、再びチーズオムレットに手を付けます。


 ……ファーヴが時の牢獄に行ってから、言葉にこそほとんどしなかったものの、彼のことを一番心配していたのはドグラスです。


 親友と再会出来て、嬉しいんでしょう。

 二人のやり取りを眺めて、そう感じました。



 やがて、朝食も食べ終わり……。



「ふう──食った、食った。この後はどうする?」


 お腹をポンポンと叩いて、ドグラスがみんなに問いかけます。


「ナイジェルは今日のために、色々と動き回らないといかんのか?」

「そうだね。とはいえ、雑務はほとんど終わらせている。午前中は、純粋に祭りを楽しませてもらおうかな」


 とナイジェルはおどろけるように言います。


「でしたら、みなさんで祭りを回りましょうよ」


 手を叩いて、私はみんなにそう提案します。


「この日のために、準備を頑張ってきたんですから。ファーヴとシルヴィにも、リンチギハムの祭りを楽しんでほしいです」

「うむ、それもいいな」

「ぜひ、ご一緒させてください。ナイジェルとエリアーヌの邪魔にならなかったら……ですけどね」


 ファーヴは腕を組んで頷き、シルヴィがウィンクを返します。


「お邪魔だなんて、そんなそんな……では、行きましょうか」

「うん」

「無論、我も行くぞ」


 私達は椅子から立ち上がります。


 こうして私とナイジェル、ドグラス。ファーヴとシルヴィの五人で、祭り中の街に繰り出すことになりました。

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
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