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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
三章

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343・ドグラスVSリュシアン

 その頃のドグラス。


 ドグラスは逃げるリュシアンを、なんとか人気ひとけのない路地裏に追い詰めていた。


「はあっ、はあっ……なかなかやるね。逃げられなかったか」


 リュシアンは息を切らし、ドグラスと相対する。


「ちょこまかと逃げおって……汝はなんのつもりだ? 我から逃げられると思っていたのか?」

「どうだろうね。それに知りたいなら、無理やりにでも聞き出せばいいんじゃないかな?」


 余裕に満ちた笑みを、リュシアンは口元に浮かべる。


(不気味な男だ)


 ドグラスはすぐさま『竜の騎士』モードに移行。

 槍を持ち、軽く振った。

 ただそれだけの動作で、周囲の空気が一変したように感じる。


「汝の言う通りだ。我はエリアーヌやナイジェルのようにお人よしではない。加減は出来ぬぞ」

「二百年以上も生きたドラゴンの本気か……僕相手に本気を出してくれるなんて、光栄だね」


 もう一度、逃走するかとも思ったが、意外にもリュシアンは魔力を迸らせ、ドグラスと真っ向からぶつかりあう。


「ふんっ!」


 襲いくる氷の矢を、ドグラスはたった一振りで全て消滅させた。


「生温い。汝、本当にあのピンク髪女を圧倒したのか? あの女は我の目から見て、なかなかの強き者だぞ」

「減らず口を叩いている暇はあるのかな?」


 続けて、リュシアンは氷の矢を連射してくる。


 ドグラスは焦らない。

 冷静に躱し、時には槍で氷の矢を叩き落としながら、リュシアンに接近していった。


 傍目には両者の力は互角に見えていただろう。


 だが、ドグラスが感じているのは、形容し難い違和感であった。


(なんだ……? この違和感は。()()()()


 両者は激しく戦い、どちらも戦いの主導権を握らせない。

 しかし、ドグラスは『本気を出す』とは言ったものの、ちっともそうじゃなかった。


 そもそも目的は、リュシアンの殺害ではない。彼を捕らえ、情報を洗いざらい喋ってもらうことだ。

 ゆえにドグラスがその気になれば、次の瞬間には決着が着くだろう。


(それとも、最初からこんなものだったのか? あの女が苦戦したと言っていたのも、たまたま調子が悪かっただけだと)


 違和感を覚えながら、さらにドグラスはリュシアンに肉薄する。

 リュシアンの口元が弧を描く。


「ふふふ……かかったね。この距離まで近付いてくるのを待っていたのさ!」


 即座にリュシアンは右手に氷の剣を錬成する。

 膨大な魔力が膨れ上がり、一瞬突風が巻き起こった。


 リュシアンはそのまま、氷の剣でドグラスの胸を貫こうと──。


「つまらん」


 だが、ドグラスは呆れたように言い、自分の胸を貫こうとした剣を易々と掴んだ。


「あぁ……」


 リュシアンが絶望の表情を見せる中、ドグラスは掴んだ剣をぽっきりと折ってしまう。


「手加減しているようにも思えんし……やはり、汝の力はそんなものか。警戒して損をした」

「ぐはっ!」


 ドグラスがリュシアンの腹に拳を炸裂させると、彼は勢いよく後ろへと吹き飛ばされた。


 体を壁に強く叩きつけられたリュシアンは、息も絶え絶え。

 虫の息だった。


「どうした? まだやるつもりか。もう勝負はついているぞ」

「はあっ、はあっ……想像以上だったよ。君の力を見くびっていた。だけど、ここからは僕も本気を出し──っ!?」


 リュシアンが腹を押さえながらふらふらと立ち上がると、突如その表情が豹変する。

 彼の体から濃い闇が立ち込めた。


「……っ! くっ! しまった。魔力を使いすぎた。体が付いていかな……」

「おい、汝! なにをするつもりだ!」


 新しい攻撃かと思いドグラスは一瞬身構えるが、どうやらそうではなかったようだ。


 リュシアンの体から立ち込めた闇は、そのまま彼の体を侵食する。

 まるで闇がリュシアンの体を喰らっているような光景だ。


 彼は「あああああああ!」と断末魔の叫びを上げ、そのまま自分が生んだ闇に喰い尽くされてしまった。

 肉や骨の一片すら残っていない。


「調子に乗って、魔力を暴走させたか」


 呆然と立ち尽くしていると、丁度ドグラスの『竜の騎士』モードも解けてしまった。


「全く……一体なんだったのだ。大仰に出てきた割には、謎だけを残して舞台から退場していったな」


 だが、目の前のリュシアンは間違いなく死んだ。

 それだけは疑いようのない事実だ。


 実際、リュシアンは闇に食い尽くされた場所には、ドグラスが今まで戦場で何度も嗅いできた死の臭いがする。


「出来れば、ヤツが知っていることを洗いざらい喋らせてやりたかったがな。今は余計なことをされなかっただけでも、良しとしようか」


 少々口惜しいが……こうなった以上は、すぐにエリアーヌ達のもとへ行くべきだろう。


 ドグラスは死の臭いに背を向け、再び夜の街中を駆けていった。

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