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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
三章

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305・【断章3】シキのいつか見た風景3

 フタバが亡くなってから、ミツハが姫の座を継ぐことになった。


 だが、ただでさえ十歳という若さで姫になったのだ。民からの反発は大きかった。



『本当に、ミツハ様が姫で大丈夫なのか?』

『継がざるを得ないだろう。アマツの姫はずっと世襲だったんだから』

『フタバ様が完璧すぎたから……ミツハ様では見劣りする』

『フタバ様がご生存だったら……』



 一介の侍女である私にすら、聞こえてくる民の声。

 当然、ミツハの耳にも届いていたと思うが、彼女は気丈と振る舞っていた。

 自分はまだ、子どもなのだから仕方がない。直に民も、自分のことを認めてくれるはずだと。


 しかし、私は知っている。

 ミツハの心は急速に弱っていた。


 今では政治のほとんどを、執政官のサネモリに任せている。サネモリも文句を言わずに、頑張っている。

 なので一見、政治は滞りなく進んでいった。


 しかし、これで本当にいいのか?


 ミツハ自身の手で、政務をこなすのがアマツにとって最適なのではないか。

 だが、変わらない。ミツハはどこか甘えており、『これでいいのじゃ』と自分に言い聞かせているようだった。


 私には、どうすればいいか分からない。




 やがて、アマツに災いが降りかかる。

 突如、街中で赤影が出現し、人々を襲い始めたのだ。


 これを人は皆、『神勾玉の力が衰えたせいだ』と言った。

 ミツハですら神勾玉がなんなのか分からない。だが、民はそのことを知らない。


 時間が経っても状況は好転せず、人々はミツハや神勾玉の力を見限り、リンチギハムの聖女様を求めた。


 聖女様は困っている人に、いつも手を差し伸べてくれる。

 だから助けを求めれば、きっと解決するはずだと。


 反吐が出た。フタバやミツハ、そして二人がダメなら聖女様に縋る民衆に。

 だが、たかが一介の侍女である自分にはなにも出来ず、日に日に聖女様を求める声は大きくなっていった。


 そして、とある日の会議。



『リンチギハムから聖女様をお呼びしましょう。聖女様なら、我が国の問題を解決してくれるかもしれません』



 執政官のサネモリが苦渋の決断を下した。


 赤影の被害は収まらない。このままでは、民が暴動を起こす。


 アマツは他国からの干渉を受けず、独自の進化を遂げてきた国だ。

 ここで他国に貸しを作るのを嫌がったんだろう。ギリギリまで聖女様を招集しようとしなかった。


 サネモリが言ったように、会議全体には『やむなし』という空気が流れていた。

 あとはミツハが首を縦に振れば、全てが決する。


『ミツハ姫、それでいいですかな?』

『うむ。サネモリに任せる』


 ここでもミツハは、サネモリの意見を踏襲した。


 結局ミツハは、自分の意思で決められないのだ。

 そしてどこか、他人が解決してくれるものだと思っている。


 聖女様を呼ぶことに異論はないが……私はミツハが首を横に振っていることを望んでいたかもしれない。

 それはサネモリの傀儡としてのミツハではなく、たった一人しかいないアマツの姫として。


『シキはどう思う?』


 会議の成り行きをじっと見守っていた私にも、ミツハは意見を求めた。

 本来なら侍女が参加することの出来ない会議だが、ミツハたっての希望で認めてもらえたのだ。


『みなさんの思う通りにすればいいかと』


 そう答える。


 実際、神勾玉の力が衰えている以上、このまま手をこまねいているだけではアマツは滅びるのには違いないからだ。


 それに……私は怖かった。


 人々を襲う恐怖の象徴である、赤影。

 あれは、私と同じ『災いの種』だという気がして止まないのを──。


 認めたくなかった。私があれと一緒なのだ──と。赤影を前にすると、心がざわつくので、さっさと解決してほしかった。


『そうか』


 私の答えを聞き、ミツハがほっと胸を撫で下ろす。


 彼女自身、本当に自分がこのままでいいのか悩んでいるのだろう。

 彼女はただ、自分の意見を肯定してくれる者が欲しかっただけだ。



 こんなので、ミツハは本当にアマツの姫が務まるのだろうか?



 似た者同士だから、とフタバは言っていたが、こんな小娘と私のどこに似ている部分が?

 そして、フタバが死ぬ前、彼女はどうして私にあんなものを……。

 なにも分からなかった。


 結局、私も大きな流れに逆らえず漂うだけの、海の藻屑のような存在だったのかもしれない。

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