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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
三章

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304・進展する調査

 その後──。

 自室に戻り、ここ一週間で得た情報を整理していると、机に置いていた念話機がピピピと鳴ります。


「はい」

『ああ──やっと繋がった。この念話機も、なかなかポンコツねえ。肝心な時に繋がらないんだから』


 念話機の向こうから、レティシアの声が聞こえてきます。


「肝心な時……って、なにか重要な情報を手に入れたんですか?」

『ええ。しかも今のあんたにとって、とても有益なものがね』

「今の私に?」


 疑問を発すると、レティシアは話し始めます。


『今日──信者の一人が、わたしに教えてくれたのよ。どうやら今、わたしがいる支部では大きな計画が進められているみたい』

「大きな計画……ですか」

『ええ。魔王信教の目的って、覚えてる?』

「『この世界に破滅をもたらす』……だったかと」


 滅びによって生まれた世界に、真の幸福があるという考えです。

 なので、世界を何度も滅ぼしかけた魔王のことを、心の底から信仰しているわけですね。


『魔王はいなくなったけど……それ以外の方法で、ヤツらは滅びの手段を模索している。そのためにある土地で、災いを呼び起こそうとした。そこは東方の小さな島国だから、裏でコソコソやるには都合がよかったみたい』

「東方の小さな島国……それはまさか──」

『うん。アマツ──あんたのいる国よ』


 レティシアからその言葉を聞き、胸が縮み上がるような感覚を受けます。


 なんてこと……。

 魔王信教が裏でよからぬことを考えていることは察していましたが、まさか一国を巻き込もうとしているなんて。


 しかも、それが今私たちがいるアマツ。

 アマツは赤影の脅威に晒されているわけですし、これは──。


『ここまで言えば、エリアーヌも分かったみたいね。ヤツらが呼び起こそうとしている災い──それが赤影だったっていう可能性があるのよ』


 言葉が出かかっていると、先んじてレティシアが答えを口にします。


「ということは、このアマツにも魔王信教の信者が潜んで、今なお計画を進めているんでしょうか?」

『その可能性はあるでしょうね。でも、計画はもう終わりに近いみたいで、信者のほとんどは島から出たみたい』

「終わりに近い? ということは、あれですか? これが終わりじゃない──と」

『多分……ね。実際、赤影による被害はあるものの、なんとかなってはいるんでしょ? 魔王信教の目的は世界の滅亡なんだし、この程度で終わるとは思えないわ』


 一気に緊張感が高まってきました。


 今まで、私は赤影はアマツだけの問題だと思っていました。

 しかし、レティシアの言うことが事実なら、その影響は世界中に──。


『この計画は、信者の極々一部にしか知らされていないようでね。具体的にそれがなんなのかは、まだ分かっていないわ』

「で、ですが、すぐに彼らの企みを突き止めなければならないですよね? そうでないと、世界が──」

『そう、慌てるんじゃないわよ。少し冷静になりなさい』

「……失礼しました」


 一度、深呼吸をします。


「レティシア、他にはなにも分かっていないんですか?」

『そうねえ……災いが具体的になんなのか。ヤツらの計画の終わりとはなにを意味するのか──についてはもうちょっと調査してみるつもりだけど、もう一つ分かったことがあるわ』


 そう言って、レティシアはさらに続けます。


『アマツに月隠宮つきがくれのみやって場所はある?』

「いえ、聞いたことがありませんね」

『だったら、すぐに調べてみなさい。その月隠宮っていう場所を、魔王信教は隠れ家として使っていたみたいだから。そこを調べれば、なにか出てくるかもしれないわ』


 レティシアの言葉を聞いて、希望が湧いてきました。

 停滞していた赤影の調査。それがようやく、前進しようとしているのです。


「レティシア、ありがとうございます。すぐに月隠宮に行ってみようと思います」

『礼なんて、いらないわよ。わたしはただ、自分がやりたいようにしているだけだから。他にもっとなにか分かるかもしれないから、潜入捜査を続けるわね』

「お願いします。ですがレティシア、無理は禁物ですよ? ご飯はちゃんと食べていますか?」

『田舎のお母さんみたいなことを言うのね。まあ……わたしにはお母さんが、もういないけど──って、そんなことはどうでもいいわ。わたしなら元気。男どもが鬱陶しいけど』

「鬱陶しい? 本当に大丈夫な──」


 続けて問いかけようとすると、そこで念話機からプチッと線が千切れたような音が聞こえ、会話が途切れます。


「もう一度、念話は……出来ませんね。リンチギハムに帰ったら、すぐに念話機の改良に取り掛からなければ」


 ですが、その前にまずは赤影の問題です。

 私はすぐに自室を出て、ナイジェルとドグラスの元に向かいました。


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