248・混乱
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エリアーヌ達が異常を察した時──。
ベルカイムは混乱の坩堝と化していた。
「戦える者は、前へ進め! 傷ついた者は後退し、回復に努めよ! 君達の頑張りは、僕達の勝利に繋がる!」
皆に指示を出しながら、僕──ナイジェルも剣を手に取り、迫り来る敵に立ち向かった。
魔王の声が頭に響き。
大きな雷鳴が轟いた瞬間。
空気が一変したかと思うと、城のいたるところから魔族が出現したのである。
エリアーヌが王都に張っている結界は、邪悪なものを退ける。それなのに魔族が現れているということは、結界が壊されたのだろう。
襲いかかる魔族の集団に、城の中にいる騎士や兵士──さらには僕も戦場に立ち、場の収束に努めようとしていた。
「ちっ……どれだけ倒しても、虫のように湧いてくる」
「これではキリがない!」
ヴィンスは剣を抜き、フィリップが魔法で。
僕達と共に魔族と戦ってくれていた。
魔族の大群に、二人とも表情に苛立ちや焦りの色を浮かべている。
「セシリーも僕からなるべく離れないで!」
「分かったの!」
僕の言葉に、セシリーが答える。
セシリーは光の聖女とはいえ、魔族と戦う力は皆無だ。
騎士達を信頼していないわけではないが、援軍がくるまで、セシリーを僕の近くから離すことは余計に不安だった。
そして城の中にいる戦えない者は、セシリーだけではない。
陛下やメイド、料理人といった者達も戦えない。マリアも今頃、彼ら・彼女らを守るために戦っているであろう。
しかも騎士の報告によると、街中もここと同じような状況らしい。手が足りていなかった。
「フィリップ──エリアーヌとは連絡が取れないのかい?」
迫る魔族の攻撃を防ぎなら、僕はフィリップに問いを投げかける。
「うむ……念話を飛ばしてはいるが、応答がない。先ほどから念話を阻害する魔力も感じる。これが原因なのだろう」
フィリップも魔族に魔法を浴びせながら、そう答える。
大体察しはついていたが、彼の口からそれを聞かされ、不安が大きくなった。
エリアーヌ、今頃君も王都の異常は気付いているのかな?
そして──彼女にも危機が迫っていないだろうか。ドグラスがいるから大丈夫だと思うが……。
彼女のことを心配しながら、僕は剣を振るった。
◆ ◆
「着いたぞ」
リンチギハム王都の正門前。
ドグラスは走るのをやめ、私を地面に下ろしてくれました。
「あ、ありがとうございました」
「なに、汝は軽いからな。ぬいぐるみを抱いているかのようだった。だが……どうして疲れているのだ? 乗り心地が悪かったか?」
首をひねるドグラス。
ドグラスに抱っこされていただけなので、疲れるわけがないのですが──ドキドキを抑えるのが大変でした。
ナイジェル達のことも心配で精神的に大きく消耗してしまいましたし、ドグラスの目にそう映るのも仕方がないでしょう。
「い、いえいえ、そんなことはありませんよ。それより──今は王都です」
「うむ」
「やはり結界が消滅しています。中から複数の魔族らしき反応も感じますしね」
街の外からでも人々の戦っている音が聞こえてきます。
雨は小降りになってきましたが、断続的に鳴り響く雷の音はそのまま。
「フィリップとも念話が出来なくて、状況が分かりませんし……すぐにナイジェル達と合流しましょう。彼なら王城にいるはずです」
「そうだな。ここから先は戦いが予想される。丁寧にエスコートは出来ぬかもしれぬが……我から離れるなよ?」
「あら、私を誰だとお思いですか? 守られるだけの姫ではありませんよ」
「そうだったな」
快活に笑うドグラス。
私達は気を引き締め、街中に足を踏み入れます。
予想通り、街中では魔族が暴れていました。
騎士や兵士達が応戦しているため、今のところは劣勢ではないようですが……一刻の猶予も許されていません。
そしてようやく、王城のすぐ前まで辿り着くと─。
「──おっと、ここで行き止まりだよ。聖女と王子様を合流させるのは、面倒だから」
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