表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

155/325

146・捜査開始です

「セシリーにもそのそーさ、お手伝いさせて欲しいの」


 セシリーちゃんはそう決意を口にしました。


「セ、セシリーちゃんがですか?」

「うん」


 セシリーちゃんは胸の前でぎゅっと拳を握り、こう続ける。


「ラルフの鰹節のこともそうだけど……なにより、みんなが困っているならセシリーが解決してあげたいの。だってセシリーはおうじょなんだから。お姉ちゃんとにぃにが頑張っているのに、セシリーだけがラルフと楽しく遊んでいるなんて、もやもやする」

「…………」


 セシリーちゃんの目をじっと見て、私は彼女の決意を計ります。


 ──彼女はまだ小さな子ども。言動もまだ幼いものが目立ちますが、その可愛さに私はいつも頬を綻ばせています。


 だけどそんな彼女ですが、実はしっかりと大人。

 第一王女として、この国の行く末を案じ、民が安寧な日々を送れるように願っています。

 だからセシリーちゃんも、この事態に心を痛め、こういうことを言い出したのでしょう。

 決して遊び半分の気持ちからではない──そう感じました。


 だから。


「……分かりました、セシリーちゃん。手伝ってくれますか?」

「うん!」


 私が言うと、セシリーちゃんは力強く頷いた。


『セシリーも行くのか──なら、ラルフも行こう。女性を守るのは紳士の役目。たとえどのような悪感が襲ってきても、ラルフが二人を守ろう』


 ラルフちゃんも勇ましい顔をして、そう言ってくれた。


「ラルフも行くの?」


 そんな表情を見て察したのか、セシリーちゃんが首をかしげる。


『そうだ。それともラルフでは不足か?』

「お姉ちゃん、ラルフはなにを言ってるの?」

「ラルフがいても、役に立たないか? って聞いているんですよ」

「ううん! そんなことないの! だってラルフはしんじゅーなんだから!」


 とセシリーちゃんが今度はラルフちゃんの体に抱きつく。

 ラルフちゃんも満更ではないよう。鼻でむふーっと息をします。


『エリアーヌはどうだ?』

「問題ありません。ラルフちゃんも手伝っていただけると、私としても助かります」


 私もそう首を縦に振ります。

 ……ちょっと賑やかになりましたが、心強い仲間が二人も増えました。


 ──私は一人じゃない。


 そのことをあらためて強く意識するのでした。


 


 私達は早速市内に出て、聞き込みを始めました。

 そして──今はラルフちゃんの鰹節が売っているお店の店内。



「だから……! あれはお店の軌道が乗ってきて、ようやく買えたバッグ! それから辛い時があった時は、そのバッグを見て頑張ってきたのに……まさかなくなるなんて……」



 店主のおじさんは悔しいのか、目の前の机にガンッ! と拳を叩きつける。


 でもセシリーちゃんはそれに少しもビビらずに、


「うんうん。あなたの気持ちはよく分かるの。辛かったんだね」


 とおじさんを慰めてあげていた。


「だろう!?」


 セシリーちゃんは意外と聞き上手。

 おじさんも気持ちよさそうに喋っていました。


「……となると、不注意でなくしたって可能性はなさそうですね……」


 私が口を挟むと、


「当たり前だっ! なくすだなんて絶対に有り得ない! 最初は盗まれたと思ったが、なにせ三十年前に買ったバッグだからな。売っても、ほとんど値打ちが付かないと思うし……」


 とおじさんは首をひねった。


「お話を聞かせていただいて、ありがとうございます」

「ありがとー、おじさん!」

「いやいや、これくらいお安いご用だ。聖女様達と話が出来て、ちょっとは元気が出てきたよ!」


 おじさんはそう言って、腕を捲る。


「あ、あのー……これは別の話なんですが、お店を再開する目処は立っていないんですか? ラルフちゃんが、ここの鰹節をすごく欲しがっていて……」

「ん……それは、まあ……悪いとは思っているんだ。だが、どうしても気力が湧いてこない。だからバッグが見つかるまで、もう少し待って欲しい」

『ぐぬぬ』


 悔しそうに歯軋りをするラルフちゃん。

 ラルフちゃんが可哀想ですが……こんなに落ち込んでいる様子のおじさんに、無茶は言えません。


「今はゆっくり休んでくださいね。うちのラルフちゃんは我慢が出来るフェンリルですから。ねー、ラルフちゃん」

『無論だ。ラルフは我慢強いのだ』


 ……とは言っているものの、ラルフちゃんの尻尾は垂れ下がっていた。


 おじさん──そしてラルフちゃんのためにも、早く事件を解決しなければ。


 あらためて、そう気合を入れ直します。

 私達はおじさんにお別れを言ってから、お店の外に出る。


「うーん、ここでは有力な手がかりは見つかりませんでしたね」

「なの……」


 しょんぼりするセシリーちゃん。


「ですが、落ち込んではいられません。次に行きましょう。ラルフちゃん、疲れていませんか?」

『フェンリルを舐めるな。これしき、セシリーの特訓に比べればへっちゃらなのだ』


 むふーっと鼻で息をするラルフちゃん。頼もしいです。


「次は財布をなくした男の子の家に──」



「た、大変だ!」



 歩き出そうとした時。

 そんな剣呑な声が、辺りに響き渡った。


「事件発生……なの?」


 セシリーちゃんも不思議そう。


「そうみたいですね──あのー、すみません。なにかあったんですか?」


 近くにいる男性に、私はそう質問をする。


「あ、ああ! 中央広場に時計台があっただろう? あれが突然なくなってしまったんだ!」

「そ、それは本当ですか!?」


 これには彼に釣られて、私も声を大きくしてしまう。


「セシリーちゃん、ラルフちゃん! 中央広場に行きますよ!」

「分かった!」

『急ぎだな? ラルフに乗れ』


 そう言って、ラルフちゃんが背中を向けてくれる。


「ありがとうございます。じゃあセシリーちゃんも一緒に……」

「ラルフ! 出発進行なのっ!」


 私が言うよりも早く、セシリーちゃんはラルフちゃんの背中に乗っていました。


『任せろ! エリアーヌも早く乗れ!」

「はい!」


 セシリーちゃんを抱えるようにして、彼女の後ろに乗ります。

 ラルフちゃんは、まあまあ大きいですからね。セシリーちゃんが落ちないように、私も気を遣わないと。


 ラルフちゃんが走り始め、私達は時計台がある中央広場に急ぐのでした。




「時計台が……!」


 中央広場。


 あれだけ存在感を放っていた時計台が、今では嘘のように消えてしまっています。

 広場にいる人達も、元々時計台があった空白の部分を囲んで、思い思いに話をしている。

 無理もないですが、急な出来事に戸惑いを感じているみたい。


「お姉ちゃん! 聞き込みするの。事件を解決しなくっちゃ!」

「そ、そうですね」


 呆然としている私に、セシリーちゃんがそう声をかけてくれた。


 私、ダメですね……セシリーちゃんの方が大人です。


「ラルフちゃんは、そこで休んでおいてください」

『う、うむ……』


 ラルフちゃんはぐったりと地面に寝そべった。

 人混みを掻き分けながらここまで走ったせいで、体力をごっそり持っていかれたみたい。

 でも急ぎながらも、セシリーちゃんが落ちないように気を遣っていたのは、さすがラルフちゃんです。

 そっとしておきましょう。

 自分の両頬を叩いて、気合を入れ直す。セシリーちゃんに負けないように、頑張らないとっ!


 広場にいる人達に聞き込みを始めましたが、返ってくる反応はみなさん一様で……。



『分からないんだ……最初は時計台が薄く見えるようになって「あれ?」って思った時には、もうなくなってて……自分でもなにがなんだか分からない』

 


 というものでした。


「一体、なにが起こっているんでしょうか……」


 胸騒ぎはどんどん酷くなっていく。


 でもここで立ち止まっては、いけません。私は私でやれることをしましょう。

 次に時計台があった場所まで移動し、そこを調べる。ぽっかりとスペースが空いており、まるで始めから時計台がなかったかのような錯覚すら感じた。


 見ているだけでは、なにも分かりません。

 だけど──私はそこにようやく手がかりを見つける。


「魔力の残滓……? もしかして、魔法かなにかで何者かが時計台を消した……ということ?」

「お姉ちゃん、そんなの分かるの?」

「はい。ですが、私だけではこれ以上……」


 と頭を悩ませていると。



『エリアーヌ──』



 声が聞こえてきました。

 女神です。


『ここに来て、ようやく分かりました。この時計台──そしてみなさんの大切なものを消失させた犯人が』

「そ、それは一体誰ですか!?」


 思わず声に出して、女神を問い詰めるような真似をしてしまう。

 女神は深刻そうな声音で、こう告げました。


『これは──《白の蛇》の仕業です』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

シリーズ累計145万部御礼
Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/1103
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000355043

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新7巻が発売中!
hev6jo2ce3m4aq8zfepv45hzc22d_b10_1d1_200_pfej.jpg

☆新作はじめました☆
「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ