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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
二章

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147・邪神《白の蛇》

『これは──《白の蛇》の仕業です』


 聞き慣れない単語に、私は首をひねる。


「それはなんなのでしょうか?」

『私と同じく、神として世界を守る役目を担った存在です。ですが、《白の蛇》は私とは少し性質が違います。神は神でも──《白の蛇》は邪神と呼ばれる存在です』

「邪神──」


 本で読んだことがあります。


 そもそも神というのは、人間にとって必ずしもいい存在ではない。

 たとえば、害虫がいなくなれば喜ぶ人は多いでしょう。だけどそれがいなくなると、害虫を餌として食べていた鳥や魚達は困ります。


 だからこそ、女神はこの世に顕現して、直接力を発揮することはありません。そうすれば、世界のパワーバランスを大きく崩してしまう恐れがあるからです。

 なので私──つまり聖女のような代行者に力を授け、その者に全てを託すわけですね。


 その中でも邪神というのは……。


「人々にとって、有害な存在──そういう存在が邪神と呼ばれる。確かそうでしたね?」

『その通りです』

「では、その邪神はどのような力を持っているのでしょうか?」


 そう質問すると、女神は少し困ったような口調でこう口にした。


『……《白の蛇》は神々の中でも謎の多い存在とされています。ですが──分かっているのは、物体を消す力に長けているということです。

 そして……ここに残っている魔力を見て確信しました。この神聖味の帯びた、独特な魔力。何千年以上も前に、同じものを見たことがあります。《白の蛇》です。

 ここの時計台だけではなく、この事件の一連に《白の蛇》は大きく関わっていることでしょう』

「そうだったんですね……」


 かなり信憑性の高い情報。


 まさか邪神まで関わっているなんて──。


 ベルカイムの王都に魔王が封印されていると話を聞いた時──いいえ。それ以上の嫌な予感を抱きました。


「あの、女神様。この事件を解決するためには、どうすれば──」


 と私が問いを重ねようとした時──それは急に起こりました。



「お、おい! 店の看板がなくなっちまったぞ! あれは先代から受け継いできた大切な看板なんだ! それがなくなるなんて……」

「さ、財布がない!? おい、お前が取ったんだろう? 早く出しやがれ!」

「そんなもの知らない! ……ああ! オレの財布もない!? お前こそ早く返せ!」



 広場にいた人達が、より一層騒ぎ出します。

 どうやらここにいるみなさん、時計台と同じように大切なものがなくなってしまったようです。

 中には疑心暗鬼になって、他人に疑いをかけてる人もいます。



 ──ぞっ。



 全身が凍るような寒気。


「セ、セシリーちゃん!」


 慌ててセシリーちゃんを呼びかけると……、


「どうしたの、お姉ちゃん?」


 と彼女はきょとん顔で、私を見上げた。


 よかった……。

 どうしてか分かりませんが、セシリーちゃんが一瞬いなくなってしまったような感覚に陥ったのです。

 でもそれは杞憂に終わったようで、ほっと一安心──といきたいところですが、今は心にそこまで余裕がありません。


『《白の蛇》が暴走しています──』


 女神は辛そうにこう続ける。


『エリアーヌ──これはもはや、あなた一人で抱え込むには、あまりに大きすぎる問題です。ナイジェルにも協力を仰ぎましょう。彼の元へと急いでください。話はそれからしましょう』

「分かりました!」


 でもその前に……!


 私は広場にいる人々に、大きな声でこう訴えかけます。



「みなさん、安心してください! この事件、私とナイジェルが必ず解決してみせます! だから今は他の人を疑ったりしないでください。私を……信じてください!」



 すると周囲は、急速に落ち着きを取り戻し始める。



「おい、あれ……」

「ああ、聖女様だ。凛々しくてお美しい……」

「知ってるか? 彼女は今まで、リンチギハムの諸問題をことごとく解決に導いてきたらしいぜ」

「なら聖女様に任せておけば安心だ。なのにオレ達は他人を疑ってばかりいる。彼女を見習って、もう少し落ち着こう」



 そんな声も聞こえてきました。


「よかった……」


 胸を撫で下ろし、次にセシリーちゃんと手を繋ぐ。


「セシリーちゃん! すぐにお城に帰りましょう! このことをナイジェルに伝えるのです!」

「なの! 蛇のこと、にぃにに伝えないと!」

「はい!」


 そう言って、私達はすぐにラルフちゃんのいるところに駆け足で向かった。



 ……あれ?



 今、なにか違和感があったような……。


「お姉ちゃん?」

「な、なんでもありません」


 いけません。

 今は余計なことを考えないようにしましょう。

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