エピローグ
《エピローグ》
ひと月後、僕は陽子ちゃんと結婚した。結婚式は1年3組の教室で挙げた。窓際の一番後ろの席に真二君は居ない。僕はあの日の真二君の笑顔を思い出した。
真二君は今にも消えそうだった。
「やあ!間に合ったね」
「真二君、行かないで」
「しんちゃん、ありがとう。でもね、僕がここに居るようじゃダメなんだ。でも、僕にも出来ないことがあるんだ。それは君たちが大人になれば解かるよ。だから、その時、もう一度だけ戻って来るよ」
「真二君には未来が見えるの?」
「未来か…。見える訳じゃないけれど、予測は出来る。ま、無いに越したことはないけれど」
「でも、また会えるんだよね?」
「たぶん…」
「約束だよ!」
「分かったよ。それじゃあ、僕にも一つ約束して欲しいことがあるんだ」
「なに?」
「陽子ちゃんを離しちゃダメだよ」
そう言うと、真二君はニカッとらしくない笑い方をして消えて行った。
1年3組の生徒たちが僕たちを祝福してくれている。ライスシャワーを浴びながら僕たちは生徒たちの間を歩いて行く…。ふと、陽子ちゃんが叫んだ。
「真二君!」
僕は窓際の一番後ろを見た。真二君が嬉しそうに僕たちを見ていた。陽子ちゃんも彼に微笑んで手を振った。
「先生、何を見てるの?」
「あ、いや、なんでもない。それより、お前たち、この米はちゃんと拾っておけよ」
「大丈夫!ちゃんと集めておにぎりにして食べるから」
「よし!」
僕と陽子ちゃんは笑いながら生徒たちに見守られて教室を後にした。窓際の一番後ろを振り返ってみると、そこに真二君の姿はなくなっていた。




