第四話
リジーは家族で経営している食堂の看板娘だった。
「いらっしゃいませ!」
夕方六時を過ぎると、常連客が店に訪れる。
「今日のおすすめはサントス牛のシチューよ!」
「リジーちゃんは今日も可愛いね〜」
「お世辞言ってもオマケしませんよ!」
常連客は冒険者が多かった。ランクの高いダンジョンが現れてから、リジーの住む街は賑やかになり、食堂も繁盛していた。両親の作る料理は評判が良い。いつも夜遅くまで人が訪れていた。
「あら、お客さん、初めてかしら」
常連客に連れられてやって来たのがファビオだった。
「ああ、コイツは今日やって来た冒険者でね、いや〜、なかなか腕が良くて助かったよ」
「あれは突っ込みすぎたからですよ。俺は首根っこを引っ張っただけです」
「まさか足元の床が抜けるなんてな〜。わははは!」
「じゃあ命の恩人ね!」
「言い過ぎだよ、恩人なんて」
「言い過ぎじゃないさ!俺の恩人だ!リジーちゃん、今日のおすすめをこいつに持ってきてやってくれ!俺のおごりだ!」
「はーい!毎度!お兄さん!うちの料理は美味しいから期待しててね!」
お父さん、おすすめ二つ! と、リジーは厨房に伝えると、他の客に呼ばれ注文を取りにファビオの席から離れた。
今日も食堂は大繁盛だ。休みなく客が訪れる。エールの売れ行きも良い。
「お待たせしました!今日のおすすめのサントス牛のシチューよ。お父さんが昨日から煮込んだから、柔らかくて味が染み込んで美味しいわよ!」
リジーは、ドンっ!とテーブルに置く。
「量が多いな」
「当たり前よ!この街は冒険者の街よ!このくらい食べないと力が付かないわ!さあ、ジャンジャン食べて!」
ほらほら、さあさあと、リジーは早く食べろと勧める。
「……美味しい!」
「でしょ!お父さんの作る料理はこの街で一番よ。だからまた食べに来てちょうだいね!」
常連客達がリジーちゃんは商売上手だなぁと大笑いする。
「ああ、また是非寄らせてもらうよ」
「やった!絶対ね!約束よ」
リジーとファビオの出会いだった。
約束通り、ファビオは度々食堂を訪れた。
いつの間にか、ファビオが食堂に顔を出した時は、
「おかえりなさい!」と迎えるようになっていた。
「おかえりなさいだってよ〜。まるで夫婦みたいだよな~」
常連客がリジーとファビオをからかう。
「だって!ファビオが何処に行って、何時頃帰ってくるか教えてくれるからつい……」
「俺達も教えてるけど〜?」
「へ!?そ、そうだっけ?」
食堂中に笑いが起きる。リジーは真っ赤になってファビオを見る。
「だって俺はリジーと夫婦になりたいから、教えるのなんて当たり前でしょ?」
何とも無しに答えたファビオに、さっきまでうるさかった食堂に一瞬の静かさが広がる。
「お、お前、リジーちゃんと一緒になるのか?」
「うん。そう決めてる」
「そう決めてるって……。リジーちゃんはどうなの?」
「は、初耳なんだけど」
「あ、そうか。言ってなかったな」とファビオは、食堂に飾ってある花瓶の花を一輪取り、リジーの前に跪いた。
「リジー。俺と結婚してください」
「……それ、今日私が買ってきて飾った花なんだけど」
「あ……ごめん」
でも嬉しいっ!とリジーはファビオに抱きついた。
ウォーっ!と食堂内は盛り上がり、歓喜の声が上がった。
何事か!?とリジーの両親が厨房から駆けつける。
「大将!リジーちゃんの結婚が決まったぞ!」
「えっ!?」
両親はファビオに抱きつく娘の幸せそうな姿に目を丸くする。
「お父さん!お母さん!私、ファビオと結婚するわ!」
「お、おう?」
「リジーを幸せにします!」
「よ、よろしく?」
その日は明け方近くまで盛り上がり、食堂は今までで一番の売り上げをたたき出した。
リジーは幸せだった。
けれどその幸せは長く続かなかった。
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