第十五話
「仕方ないわね」そう返事したマリアは、ラウルと共にラウルの生家へ向かっていた。
馬車の中でたくさん話をした。まあ、主にラウルがだが……。
ラウルの生まれた国や家族構成、性格、商売のこと。マリアと再会?するまでのこと。
よく喋るわ〜。と少しウンザリしていたのは内緒にしているが。
マリアはというと、
「お気楽なお一人様よ」と一言のみ。
「そ、それだけ?」と言われれば、
「大切な人は作らない主義なのよ」と答えると、
ラウルは、ガーンと落ち込み、「ファビオのせいだ」と肩を落とし静かになった。
ラウルの生家まで二年かかった。
本当に遠くまで探しに来てくれたのかと、少し感動した。ほんの少し。
ほっといてくれても構わなかったのにという気持ちもまだ残っている。
その間も、「僕は仕入れ担当だからね」と帰る道すがら、取引の確認、納品についてなど、ラウルは積極的に動いていた。もちろん、マリアを連れて。
取引先では、「僕の妻です」と紹介された。
「うちの婿にと考えていたが……」と言われたこともあった。
取引先の娘に睨まれることもあった。
「僕の妻はマリアだけなので」とニコニコするラウルの隣で、マリアは面倒くさいな……と嘆息していた。
そんな事を何度か繰り返し、ようやく、マリアの居た国から三つ離れたラウルの国へ辿り着いた。
「まあ!ラウル!ラウルだわ!お帰りなさい!」
そこは貴族ほどではないが、大きな家だった。
寄った街々で、手紙を出し、マリアを連れて帰ることは伝えていたようだ。
「あなたがマリアさんね!ようこそ!」
「ラウルが嫁さん連れて帰ってくるとはな!」
「めでたい!」
マリアはあまりの歓迎ぶりとテンションの高さに一歩後退った。ラウルの両親、姉二人とその夫と子供、兄と妻と子供と、ラウルの家族が勢揃いしていた。
「マ、マリアです。よろしくお願いいたします」
ラウルの家族は快くマリアを迎え入れてくれた。
安心はしたが、ずっと一人で居たマリアには居心地が悪いものだった。
十年弱、ラウルは家を離れていた。両親は歳を取り、姉二人は嫁ぎ、子もいた。もちろん跡を継いだ兄にも。リジーを求めて旅する中、新しい商品を見つけ、手紙で報告し、取引をしてきたものの、申し訳なさが残っていた。
それなのに、ラウルとマリアのために、実家にほど近い場所に小さいながらも家を用意してくれていた。
ラウルの仕入れてきた物は珍しさもあって、よく売れたらしい。家族からは返ってお礼を言われたほどだ。自分勝手に家を出たのにと、ラウルは涙した。
だからこれからはマリアと共に、家族のために、商会のために生きていこうと思った。
ラウルはまた間違えた。
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