第十四話
「ちょ、ちょっと!私、こんな良い宿に泊まれないわ!」
「大丈夫!僕が払うからさ」
ラウルはマリアの手を引き、平民が泊まるにしては高級な宿に入っている。
「二人部屋を一つ」
「ひ、一つ!?」
「だって夫婦でしょ」
「は!?」
ラウルは受付で鍵を貰い、マリアの手を握ったまま部屋のある二階へ上がっていった。
部屋に入ってからやっとラウルはマリアの手を離した。
「強引なのね」
マリアは離された手を擦りながらラウルを睨んだ。
「だってもう離れたくなかったから」
「それに夫婦って……」
「約束したでしょ。見つけられたら、もう一度結婚するって」
ラウルはそう言って部屋のソファーに腰をかけた。
「僕は幼い頃から君の存在を感じていた。いつか見つけるんだと、そうして生きていた。家族も僕が何かを探している事は分かっていたらしい。
十八になって家を出た。家族は許してくれたよ。その代わり、良い商品を見つけて来いってね。
僕の家は商人なんだ。商魂逞しいでしょ。君が南にいることは分かっていたから、向かいながら取引してね。ここまで来たんだ」
座ってとマリアに声をかけ、ラウルはそのまま話を続けた。
「少し向こうの街で樹の実や貝殻を削って作ったアクセサリーがあると聞いてね、そこに向かう途中だったんだ」
「それ……、きっと私が作ってたものだわ」
マリアは鞄からアクセサリーを取り出してラウルに見せた。
「少しずつ売ってたの。働いてた果樹園のオーナーに許可をもらって。一度に売ると商品価値が落ちるからってアドバイスももらったわ」
「ああ、これは良いね。南国の土産品として最良だ。それにアドバイスも的確だね」
ラウルはアクセサリーを手に取り、角度を変えて眺めた。
「マリア」
「何?」
「僕は君が良い。生まれ変わって別人になっても、どうしても君をここが求めてしまう」
ラウルはそう言って胸を叩いた。
「さっき言った約束覚えてるでしょ。生まれ変わっても一緒になりたいって」
「嫌だって言ったわ」
「うん。でもその後に見つけてくれたら良いと言ってくれた」
「……」
「だから探した。七年もかけて。
……ああ、そうか。君が前世で一人だった時間の長さと同じ位だ。今更だけどね」
「……ラウル」
「あは!初めて僕の名前を呼んでくれた。嬉しいな。なんか、胸が……」
ラウルの目から涙の雫が落ちる。
「もう決して一人にしない。マリアしかいない。だからお願い。僕と一緒になって」
ラウルは横に座っているマリアの手を握り、涙目で懇願した。
そしてマリアは、その手を払い除けることが出来なかった。
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