第十話
あれからどれくらい年月が経ったのだろう。
街外れのアパートで暮らしていた二人に、今では二人の娘、三人の孫がいる。
二人が最初にしたことはファビオの義足を作ることだった。手付かずだったファビオの稼ぎは質のよい義足を作ることができた。動きはまだぎこちないが生活するのに影響はなかった。
ダンジョンへ行くことはできないが、薬草の採取や畑仕事をすることが出来た。
一人の娘がリジーが両親と暮らした食堂を買い、小さなカフェを開いた。こんな田舎街にと心配したが、娯楽の一部として喜ばれている。
そして今日、新しい命が誕生した。
「「ジャック?」」
リジーとファビオが声を合わせた。
「え、兄さんに似てるの?」
「ええ、そっくりね。びっくりしたわ」
「もしかして生まれ変わり?」
「それは違う。似ているだけだろう」
「じゃあ、この子の名前はジャックにしようかしら」
「それは駄目よ。二人でよく考えて、この子に相応しい名前を考えてあげて」
「そうね、そうするわ!」
生まれたのは男の子。ジャックに似ていてびっくりしたものの、ジャックではない。生まれ変わったのなら親の自分達に分かるはず。実際はそんなことはないのだが。
今はこの子が幸せになるよう、祈りを捧げよう。
「ねえ、父さん、生まれ変わっても母さんと一緒になりたいと思う?」
「ああ、もちろんだ」
「母さんは?」
「え、絶対嫌よ」
「リ、リジー!?」
「だって、すごく寂しい思いもしたし、苦労もしたわ。来世があるのなら、今度はちゃんと側にいてくれる人がいいわね」
「今度はちゃんと側にいる!」
「まあ、生まれ変わっても同じ場所に生まれるわけでないし、私だって分かる可能性もないわ」
「絶対分かる!」
「ふふ。もし見つけられたら、もう一度結婚してもいいわね。でも、冒険者だったらお断りよ」
二人は歳をとっても、神殿裏の共同墓地に花を持って行く。二人の第一子であったジャックとリジーの両親に会うために。
死は二人を分かつことなく、同じ時期に天へ旅立った。
仲の良い夫婦だった。若い頃の苦労が嘘のように……。
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