表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/31

7の2 関東侵攻

 天正十五年(1587年)正月の二十日。

 福島屋形の中将様(伊達政宗公二十一歳)の下へ、徳川家康から援軍の要請があった。

「今年、秀吉が動く。伊達殿の後詰をお頼み申す」


 さらに舅の本多忠勝殿から、添え状もあった。

「関白秀吉への正月祝いで無礼があったらしい。織田信雄と丹羽長重が、隠岐に島流しになった。織田家当主は、三法師様(八歳)に戻り、越前大野城へ移った。新しい布陣は次の通り」


 尾張(五七万石)に、福島正則

 北伊勢(二二万石)に、黒田長政

 南伊勢(三一万石)に、蒲生氏郷

 志摩と伊勢の一部(六万石)に、九鬼嘉隆

 伊賀(一〇万石)に、生駒親正


 飛騨(四万石)に、金森長近

 東美濃(三三万石)に、加藤清正

 西美濃(二五万石)に、加藤嘉明

 近江(八三万石)には、奉行衆と馬廻衆


 加賀、能登、越中(一一九万石)に、前田利家

 越前(六八万石)には、織田三法師を含む諸大名

 若狭(九万石)に、浅野長政


「敵は一〇万から二〇万だ。伊達殿の援軍が欲しい」

 かなり詳しい情報を頂いた。忍者が情報収集したのだろう。

 中将様は、使者への返答を考えていた。


「必ず後詰に参る。だが、奥羽の雪が融け、兵を集めて、関東を通って、三河まで行くには、半年は掛かる。徳川殿には辛抱強く待っていて欲しい。御武運を祈る」

 徳川の使者は、納得して帰って行った。


「秀吉が攻めて来るぞ。俺は小田原城を落として、徳川領内で秀吉と決戦する。まずは準備だ」

 伊達家は兵農分離が済み、足軽を多く抱えた。よって何時でも戦える。

「鉄砲は何丁あるのか?」

 近習で宿老の遠藤隼人(十六歳)が答える。

「三〇〇〇丁です。大増産と敵からも回収しました」


「そうか。決めることは沢山あるが、出陣は二月三十日の先勝とする。ちょうど桜の時期だ。伊達の軍旗は今まで通り『白地に朱の丸』とする」

 中将様は、帳面を見て即決した。

「宿老の五人と、庄内の二人を呼び出せ」

 中将様の伝達が城下に飛んだ。


 一刻(2時間)で、中将様の前に七人が顔を揃えた。

「湯村右近大夫(二十九歳)と中島伊勢守(三十六歳)に福島の留守居役を命じる」

「はっ」

 表書院にて、二人が平伏した。


「俺は二月末から戦を起こす。

(湯目)又次郎には北陸道軍を任せる。北越後と佐渡に、上杉と直江を加えて、二万の軍勢だ。鉄砲五〇〇丁を付ける。


(伊達)藤五郎には中山道軍を任せる。南仙道と会津、那須郡に、真田を加えて、二万二〇〇〇の軍勢だ。鉄砲五〇〇丁を付ける。


(片倉)小十郎には東海道軍を任せる。浜街道と北常陸で、一万七〇〇〇の軍勢だ。鉄砲五〇〇丁を付ける。


(原田)左馬助は、俺の傘下で北奥羽軍二万三〇〇〇を指揮せよ。鉄砲五〇〇丁を付ける。


 俺は、伊達、信夫、米沢に、旧大崎と葛西を加えて、二万一〇〇〇を直卒する。鉄砲五〇〇丁と機動隊一〇〇〇名を加える。

 俺と左馬助の中央軍は、真っ直ぐに小田原城へと向かう。

(遠藤)隼人は、近習として俺に付いて来い」


 隼人は提案を一つ入れる。

「中央軍には鉄砲が一五〇〇丁ですが、足りますか? 敵地で刀狩りや鉄砲狩りを行い、武器を取り込んでは如何でしょうか」

「おお、良い考えだ。後方が安全になり、味方の武器が増える。戦場で刀を力任せに振ると、折れたり曲がったりするからな」

 中将様もほほ笑んだ。


 左馬助殿も話に加わった。皆が若いので、自由な家風がある。

「では、一尺(30センチ)以上の刃物は取り上げましょう。包丁や草刈り鎌は、民百姓に必要でしょうし」


 小十郎殿が手を挙げた。

「一尺で良いでしょう。城の米蔵は、ブン取っても構いませんね。そのかわり村の乱取りを禁止しましょう」

「よし、関東の民は戦後、伊達の領民となる。村での乱取りは禁止だ。ただし、敵の城にある米や塩は奪ってよい」


 それから武具や兵糧の準備をして、二ヶ月が過ぎた。

 桜の開花は、雪の終わりと田植えの始まりを告げていた。

 二月三十日、福島屋形の前に「日の丸」の旗が林立した。

「日の丸は後の世に伝わり、日本の国旗となります」

 隼人は、馬上の中将様に伝えた。

「俺たちが日本だ。秀吉のいいようにはさせない」


「皆の衆、伊達軍はこれから出陣する。目標は第一に秀吉の首、第二に小田原落城だ。奥州者の底力を天下に見せよ」

「おおーっ」

 皆が腕で天を突いた。

「ときの声を上げよ」

「えい、えい、おぉーっ!」

「えい、えい、おぉーっ!」

 うす紅色満開の桜の下、総勢一〇万を超える奥羽の漢たちが、今戦いを始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ