第63話: 空からのメッセージ
日の村の空は、まだ亀裂を生んでいた。
それは小さなひびなどではない。
雲が裂けたようなものでもない。
まるで巨大なガラスが、まさしく砕け散ったかのようだった。
濃い紫の亀裂が四方へと広がり、
そして奇妙なことに……
すべての音がゆっくりと消えていく。
風は止み、
鳥のさえずりも絶え、
木々の葉は動きをやめる。
まるで世界全体が――
息をひそめているかのようだ。
その下では、村人全員が蒼白な顔をして立ち尽くしていた。
子供を強く抱きしめる者、
ゆっくりと後ろずさる者、
体を震わせる者までいる。
アキハラは目を細め、空を見上げる。
彼の側には――
リオラ・ライゼン、
カイリス・ヴェイラ、
セイラ・リュヌ。
誰もが黙り込んでいた。
彼らには何かが感じられる。
得体の知れない、奇妙なものだ。
魔力が――
まったく、存在しない。
それなのに……
空気には圧倒的な重みが満ちていた。
そのとき――
亀裂の奥から、白い光が現れた。
ゆっくりと、
降りてくる。
さらに降りる。
さらに。
そして、一人の男が姿を現した。
長く伸びた白い髪。
黄金色の瞳。
風もないのに、ゆったりとなびく白い衣装。
体は地面から数メートル浮かんでいる。
表情は平板そのもの。
穏やかだ。
冷たくもなければ、温かくもない。
ただ――
あまりにも静かだった。
オリン
カイリスが瞬きする。
「……人間なのか?」
セイラがかすかに首を振る。
「……違うわ」
リオラは杖を強く握りしめる。
「魔力なんて、何も感じない」
アキハラはただ黙っていた。
視線は少しも逸らさない。
オリンはゆっくりと見下ろす。
その眼差しは、村人たちを越え、
家々を越え、
グランドマスターたちの姿さえも通り過ぎていく。
それから、静かに口を開いた。
声は大きくない。
だが不思議なことに――
この場にいる誰もが、はっきりと聞き取った。
「私は助けに来たのではない」
沈黙が落ちる。
カイリス:「……はあ?」
セイラ:「……はあ?」
リオラ:「……はあ?」
アキハラ:「……それだけを言いに来たのか?」
オリンは表情ひとつ変えずに続ける。
「警告を伝えに来たのだ」
彼の手がゆっくりと動くと――
突然、空全体が大きな光に包まれた。
まるで世界地図が浮かび上がったようだ。
皆が見つめる中、地図の上に赤い点が現れる。
西の果て――
はるか遠くの地だ。
その点は、心臓のようにゆっくりと脈打っていた。
「この地が――」
「魔力を持たぬ者たちの源であり」
「魔王の居場所でもある」
アキハラの瞳が鋭く細まる。
すると今度は、二人の姿が浮かび上がった。
アルギエル
そして――
ライレル
リオラの体が凍りつき、
カイリスは唾を飲み込み、
セイラは自分の衣装をぎゅっと握りしめた。
さらに小さな黒い点が次々と現れる。
一つ、
二つ、
三つ、
四つ、
五つ、
六つ、
七つ。
「七つの大罪――彼らは既に動き出している」
地図全体の色が変わり、
今度は鮮やかな赤い光が南の地を照らし出す。
「彼らの真の標的は……」
「ムシャフ王国だ」
辺りは水を打ったように静まり返る。
アキハラが前へ踏み出した。
一歩、
さらに一歩。
瞳の色は冷たく冴えている。
「もしすべてを知っているのなら……」
足を止め、言葉を続ける。
「なぜ、何もしない?」
リオラが慌てて振り返る。
「アキハラ、待て!」
だが彼は足を止めない。
「なぜ、ただ見ているだけだ?」
「なぜ、多くの者が死ぬのを黙って見過ごす?」
手の周りに小さな炎が生まれ始め、
空気は次第に熱を帯びてくる。
オリンはただ彼を見つめる。
表情には、依然として何の変化もない。
「我々の役目ではないからだ」
瞬く間にアキハラの炎が大きくなる。
リオラが急いで彼の腕を掴む。
「落ち着いて、アキハラ!」
カイリスとセイラもすぐに駆け寄った。
彼らにはわかっていた――
この眼差しは、アキハラが闘いに臨むときのものだと。
数秒が過ぎ、
手元の炎はゆっくりと消えていった。
――数時間後。
村の入り口には、小さな荷物が整えられていた。
剣、
杖、
旅の衣装――
彼らは旅立つ準備を整えたのだ。
ノアはヒナの腕の中にいたが、
アキハラの服の裾をぎゅっと掴んで離さない。
「……だぁ……」
アキハラはかすかに微笑み、
柔らかく頭を撫でてやる。
ヒナはうつむいたまま問いかける。
「……必ず、帰ってきてくれるの?」
アキハラは黙り、
村の景色を見渡す。
木造の家々、
走り回る子供たち、
ここで暮らす人々。
自分を「アキラ」という名前で受け入れてくれた、小さな場所。
穏やかな日々を与えてくれた故郷だ。
それから、再び柔らかく微笑む。
「ああ、必ず帰る」
だが瞳の色は、鋭さを増していた。
「そして今度こそ……魔王を、完全に滅ぼす」
リオラが真っ直ぐに彼を見つめ、
カイリスは力強く微笑み返し、
セイラは黙って頷いた。
――ムシャフ王国。
時刻はまだ午後だというのに、空は深く暗み始めていた。
王国の城壁の上には、ガルドロスが佇んでいる。
腕を組み、
風が髪をなびかせるままに任せ、
遠くの彼方を見つめている。
そのとき――
地面が揺れ始めた。
――ゴトン。
――ゴトン。
――ゴトン。
重い足音が、響いてくる。
遠くの地平線に、四体の巨体が姿を現した。
アンデッド――
体はまるで岩の亡骸のようで、
それぞれが塔ほどの高さを誇っている。
そしてその先頭には、ただ一人の男が歩んでいた。
濃い赤の髪に、
燃えるような紅い瞳。
肌の表面は、溶岩のような亀裂が走っている。
表情は――
黙っていてさえ、激しい怒りに満ちていた。
レイゴール
彼は遠くに王国の姿を認めると、
ゆっくりと口元を歪めた。
「ほう……」
「この国を、滅ぼせばいいのだな?」
――西の果て、険しい崖の上。
冷たい風が吹き荒れる中、
ズワが遠くを見つめていた。
だが次の瞬間、彼の瞳は驚きに見開かれた。
目前に開いた大きな黒い穴の前に――
二人の人影が佇んでいたのだ。
男と女。
アルギエル
そしてライレル。
ズワは凍りつき、声が漏れた。
「……はあ……?」
「次回更新: 6月 10日 21:00」




