表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

第18話:人間の土地を踏みにじる罪

日の村の夜は…どこかおかしかった。


暗いからではない。


静かすぎるからでもない。


失われたものがあったからだ。


風が。


風が吹いていなかった。


木の葉は一つも動かない。


あまりにも静かで。


まるで世界が…息を止めたようだ。


その小さな家の中で、


不知火秋原は目を覚ました。


別に音がしたわけじゃない。


だけど体が知っていた。


何かが来ることを。


ゆっくりと座り上がると、


目に力が込まる。


「…リオラ」


部屋の隅には、


リオラ・ライゼンが立っていた。


彼も眠ってはいなかった。


目は扉の方を見つめている。


「感じる」


声は低く、


重たい。


「…今までとは違う」


秋原は立ち上がった。


慌てている様子はない。


だけど、そのすべての動きには覚悟がある。


優しく眠る赤ん坊の方を見る。


ノアだ。


平穏で、


穏やかで、


まるで外の世界とは結ばれていないようだ。


だけど、それがかえって…怪しかった。


「中に入れろ」


秋原はノアをそっと抱き上げる。


リオラはすぐに動き、


窓を閉め、


扉に鍵をかけた。


二人の位置は決まっていた。


秋原が前、


リオラが側。


守るために。


外では…


足音がする。


ゆっくりと、


焦らず、


重くもない。


だけど…


その一歩一歩が、


土をひび割れさせる。


誰もいない村の道を…


彼は歩いていた。


頭を少し傾げ、


目は半分だけ開けている。


まるで…退屈そうだ。


だけど、その周りに立ち上る気は、


すべてのバランスを壊してしまう。


彼の名は、


アケディア。


七つの大罪の一つ。


村の犬が吠えようとした。


だけど、声は喉で詰まった。


体が震え、


そして倒れた。


気絶したのだ。


触れることもなく、


見ることもなく。


アケディアが止まった。


あの小さな家の前で。


彼は少しだけ頭を上げる。


目は空っぽだけど、


正確に狙っている。


ただ一つの点を。


「…ここだ」


声は微かで、


ささやくようだ。


だけど、空気が震えている。


家の中で、


秋原は拳を握りしめた。


炎がまとわりつく。


今度は、


ちっぽけなものじゃない。


迷いもない。


リオラが手をかざす。


雷が集まり始める。


青い光が周りをゆらりと包む。


二人は…


覚悟した。


扉が開く。


ゆっくりと。


秋原が外に踏み出し、


リオラが後を追う。


そこにいたのは。


目に見たのは。


初めて見るその姿。


アケディアが二人を見る。


興味もなく、


驚きもなく。


まるで…


初めから知っていたように。


「…人間」


ただ一言。


平らかな、


空っぽな声。


リオラが動く!


バシン!


雷が落ちる。


速い。


警告なしに。


まっすぐにアケディアに向かう。


だけど、


雷はすり抜けた。


彼が避けたわけじゃない。


ただ…


初めから何にも当たっていなかったように。


リオラが固まる。


「…何――」


秋原が前に出る。


手の炎が高く上がる。


熱く、


骨太である。


打ち込む!


ドカン!


炎が弾けて、


彼の体に当たった。


だけど、


傷一つつかない。


傷もなく、


反応もない。


ただ立っているだけだ。


「…うるさい」


一言。


彼は手を少しだけ上げる。


速くもなく、


力も込めていない。


だけど――


ピシャリ。


空気が割れた。


秋原もリオラも、同時に飛ばされた。


体が土にたたきつけられる。


激しく。


村の人が出てきた。


だけど、その場で固まる。


足が震えて、


倒れる者も出た。


立ちたくても立てない。


その圧力が…


あまりにも大きすぎた。


秋原がゆっくりと起きて、


唇の端から血が流れる。


目の色が変わる。


より鋭く、


より冷たく。


「…これは生き物じゃない」


側でリオラも立ち上がる。


息が苦しい。


「…これは…別の何かだ」


アケディアが踏み出す。


一歩だけ。


近づく。


下の土がゆらゆらと崩れていく。


「…取るだけだ」


感情のない言葉が、


だけど、はっきりと届く。


その瞬間、秋原は理解した。


彼は家の前に立ち、


炎がさらに大きく燃え上がる。


熱い。


周りの空気が変わる。


まるで二年前の戦場に戻ったようだ。


「…もらいたければ――」


声は低くて、


だけど、素肌の圧力がある。


「――この俺を越えていけ」


静けさが落ちる。


少なくとも秒数分。


アケディアが止まった。


秋原を見、


次にリオラを見、


そして家を見る。


目は空っぽだけど…少しだけ、考えているようだ。


初めての間合いがあった。


「…面倒だ」


そっとため息をつく。


本気で退屈そうな様子で。


だけど――


ゴウウウウン!


圧力が弾けた。


火の爆発じゃない。


雷でもない。


ただ、すぐれた力の塊が。


秋原とリオラはもう一度、遠くまで飛ばされる。


体が土に打ちつけられる。


先よりも強く、


残酷に。


だけど、


アケディアは続けなかった。


家に入ることもない、


ノアを奪うこともない、


誰も殺さない。


ただ、立っているだけだ。


少しの間。


「…まだ、時ではない」


微かなささやき。


そして一瞬のうちに、


消え去った。


光もなく、


音もなく、


痕跡もなく。


静けさが。


完全なる静けさが。


秋原がゆっくりと起き上がる。


息が重たい。


目は依然として鋭い。


「…彼は…俺たちを殺せたはずだ」


リオラは土の上に座り、


まだ息を切らしている。


「…だけど、殺さなかった」


二人は黙り込む。


そしてそれが…


さらに恐ろしいことだった。


秋原はすぐに家へ走る。


扉を開ける。


ノアはまだそこにいた。


眠っている。


静かに。


まるで何も起こらなかったかのように。


彼はそっとため息をついた。


だけど、安心はしていない。


もう、二度と。


外では。


空の色が変わり、


雲は速く流れ始める。


風も戻ってきた。


だけど、どこか…違う感じがする。


はるか南。


岩だらけの地。


そこに彼の姿が再び現れた。


アケディア。


彼はただ立っている。


一人で。


目の前には。


一つの王国へと続く広大な大地。


ムシャフ王国。


戦士たちの地。


石の大師たちの地。


肉体の力こそが法となる場所。


アケディアはそちらを眺める。


目が少しだけ大きく開く。


初めて…


わずかな興味が浮かんだ。


「…もしかしたら…」


彼はゆっくりと頷く。


小さな動きだが、


意味のある動きだ。


「…今度は退屈しないかもしれない」


風が吹く。


その影を前へと運ぶ。


そして音もなく。


彼は歩き出す。


南へと。


次なる破滅へと。


その頃。


日の村という小さな村では…


二人の者が黙ったまま立っていた。


彼らは生き残った。


だけど知っている。


これは始まりに過ぎないことを。


そしてさらに大きな何かが…


近づいていることを。

「次回更新: 4月 21日 20:20」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ