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横浜万博の警備バイトに飛び込んだら、クセ者だらけの仲間と人生が変わった  作者: 岩田 ヒロ


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8/8

万博閉幕の夜

昭和から平成へと時代が変わった年、大学生の僕は横浜万博の警備のバイトに応募する。この経験が自分の人生に大きな影響を与えるとは知らずに。第8話、万博閉幕の夜

 万博の最終日、昼から僕と結城さん、そして、住吉さんと藤井さんの四人がゲートの警備に入った。


 ところが全員が不機嫌だ。なぜなら、全てのパビリオンの警備員やコンパニオンは今日が最後で、閉幕すると盛大に打ち上げをして解散。明日から仕事はない。しかし、僕たちは24時間勤務なので、明日の昼まで仕事。つまり閉幕しても僕達は打ち上げに参加出来ない。


 さらに閉幕しても明日から万博の解体作業があるため、業者がゲートを出入りするので、僕達の本当の業務終了は十月末なのであった。


「なんだよ、なんだよ、最悪だよな、今日は。あいつら酔っ払って一緒に帰って西口で2次会、朝まで3次会だよ。あーつまんねー」と結城さんは愚痴を言っている。


 確かに僕達だけは閉幕の打ち上げのかやの外だ。しかも、会場内で飲んで帰る警備員やコンパニオンを見送らなければいけない。24時間のゲート警備は僕達のA班とB班が交互に警備するのだが.まんまと僕達のA班がこの日の警備になったのだ。ついてない。


 昼過ぎから大勢のお客さんが入場していく。最終日の夜は盛大な花火が上がるからだ。僕達はこれまでにない不機嫌な顔をして、ゲートに立っていたのだ。


 僕は立ちながら、この半年間のことを思い出していた。田村さんの無断欠勤、火事、結城さんのフィアット、ダフ屋、競馬。洋子ちゃんにはたかれた結城さん。そのとばっちりで連絡がとれなくなった直子さん。久美と行った新島。


 半年前にこんな事件、事故、イベントに遭遇するとは夢にも思わなかった。けれど、こんな刺激的な経験は大学を通うだけではあり得なかっただろう。


 その後、洋子ちゃんはたまに見かけるが結城さんのことを完全にシカト。直子さんも僕のことを見向きもせず、ゲートを通過していった。僕は何も悪いことしていないのに。後ろ姿を見た夜、何度か電話しようと思ったが、やめた。向こうから電話来るのを待つことにした。


 日が沈み、花火の打ち上げが終わると大勢のお客さんが出てきた。歩道に収まらない人たちが車道にはみ出て、ゲートを通過する。初めは歩道を歩いてと注意したが、途中で諦めた。お客さんがほぼ退場すると会場内で打ち上げが始まった。


 夜10時を過ぎ、コンパニオンや警備員たちが帰っていく。もう明日からお客さんもバイトのコンパニオンや警備員が見えなくなるとは信じられなかった。このまま永遠に続くような気がしていた。


 そんなことを考えていると、歩道を直子さんが通過していく。きっとこれが見納めかなと思っていたら、彼女が振り返って僕のとこに走ってくる。そして、

「電話ちょうだい」とだけ言って、去っていった。よかった!直子さんから声をかけてくれた。さっきまで、何で今日に限って警備なんだよって不機嫌だったのが、突然、勤務してて良かったと思ったのだ。


 ボックスの中にいた結城さんが、

「電話ちょうだい」と僕をからかってくる。

「なんだよ、仲直りかよ」

「まだ、分かんないよ。後で電話してみる」


 その後、僕がボックスに入り、結城さんがゲートに立った。11時過ぎになんと洋子ちゃんが通過した。知らない男と手をつないでいる。結城さんのビリビリとした殺気を感じた。うわー、結城さん、大人の対応で静かに見送ってと願った。


 結城さんが、一歩、二歩と前に進む。やばいと思い、

「結城さん、ストップ」と小さい声で言った。洋子ちゃんは仕返しとばかりに男と手をつないだ姿を結城さんに見せつけたかったかのようだ。


 そして、後ろ姿が小さくなった時、洋子ちゃんの片手が上がり大きく手を振っていた。バイバイと聞こえた気がした。それを見た結城さんが、

「なんだよ、あのおんな。ふん」

 結城さんの負け惜しみのような声が聞こえた。


 11時半になり、直子さんが帰るころと思い、警備は結城さんに任せ、電話ボックスに入った。

「もしもし」直子さんが出た。ホッとした。

「もしもし、万博終わったね」

「うん」

「でも僕たちのゲート警備は10月末まであるんだ」

「・・・」


「あのさ、あの日の女の人」

「知ってる」とさえぎられた。

「アメリカ・パビリオンの人だよね。すごい美人って有名人よ」

「そうなんだ。でも、あの子はもう一人の警備のバイトしてる人といろいろ揉めていて、それの仲介をあの日はしてたんだよ」

「ふーん、いろんな人が彼女に声かけてたみたい」


「直子さんは、万博終わった後どうするの?」

 とりあえず誤解はとけたようで、いつも通りに会話が出来た。次会う約束をして電話を切った。


 最終日、ゲートのバイトになり、しかも、あの時間僕がゲートに立ってたから、直子さんが声をかけてくれた。よかった、この日バイトで。


「どうだった?」

「とりあえず誤解はとけて、次会う約束した。そうそう、洋子ちゃんって美人で有名だったみたいだよ。いろんな人が声かけてたって、直子さんが言ってた」

「美人はさ、自意識過剰なんだよ。自分はかわいいって思っていて、周りの男たちは必ずわたしのことを好きになるって思ってるんだ。そんで、君はわたしのことだけ見なさいって言うんだよ」

「そうなんだ」となんとなく分かるような気がした。


「女の子たちは目の前の男の子が他に好きな子がいるなとかも分かるらしいよ」

「そうなの?」

「おまえ、直子さんが他に遊んで男いると思う」

「いてもおかしくない」

「高校からの彼女は?」

「いないと信じたい」

「女たちは嘘うまいから、俺たち男は騙される。俺ら、男たちは嘘が下手だから、女たちはすぐ見抜く」

 さすが、あそこを切られそうになったという結城さんの言葉は重かった。

「僕たちの知らないとこで彼女たちは何してるかなんて分かんないし、逆に僕らのことも彼女たちは知らないと思うけど」

「そうだろう。だからホッとくんだよ。だけど二人になったら目見て話して、エッチすればいいの。な」

「そうだね」

 なぜか説得力があった。そろそろ住吉さん、藤井さんが来て交代する時間だ。


「圭子ちゃんはどうなったの?」

「今日はバイト入ってないって。今度、彼女になってと言うつもり。知ってる?彼氏、彼女になるとうことは浮気禁止なんだよ」

「じゃ、僕は久美に対して、まずいことしてるってこと?」

「そう」

「バレなければいいんだよね?」

「バレたらあそこちょん切られるぞ」


「オメーラ、夜中に大きな声で変な話してんじゃねぇよ」住吉さんがやって来て大きな声で怒鳴った。


読んでいただき、ありがとうございます。毎週火曜日に続編を投稿する予定です。

コメント、感想、よろしくお願いします。

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