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僕たち横浜万博警備隊 ― 1989年、青春と事件の半年間 ―  作者: 岩田 ヒロ


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10/10

その後のこと ― 僕たちの半年間と、夜の東口ゲート

誤字脱字を修正しました。


1989年、横浜。

昭和が終わり、平成が始まった年。

大学生だった僕は、横浜万博の“24時間ゲート警備”という

奇妙で刺激的なバイトに飛び込んだ。


そこで出会ったのは——

暴走族上がりのイケメン、

英語も暗算も最強の謎の男、

競馬と風俗に人生を捧げる元自衛官、

そして板前修行中の寡黙な兄貴肌。


事件、恋、喧嘩、火事、ダフ屋、二股、友情。

半年間のすべてが、僕の価値観をひっくり返した。


これは、実在の横浜万博を舞台にした

“青春ノンフィクション小説”です。


 万博が終わってから、僕はしばらく“燃え尽き症候群”のようになっていた。

 半年間、あれほど濃い日々を過ごしたのだから当然かもしれない。


 大学に戻っても、授業は退屈で、友達との会話もどこか上の空だった。

 あのゲートでの夜の会話、台風の中の警備、火事、ナンパ、恋、嫉妬、喧嘩、笑い——

 あれらはすべて、大学生活では絶対に得られない経験だった。


***


 結城さんは床屋を継ぎ、圭子ちゃんと本当に付き合い始めた。

 あの結城さんが「彼女一筋」になるとは思わなかった。


 住吉さんは板前の修行を続け、妹の就職を待ちながら、いつか自分の店を持つ夢を語っていた。


 藤井さんは警備会社の正社員になり、競馬とソープと居酒屋を人生の楽しみにすると言っていた。

 それを誰も否定しなかった。

 あの4人の中では、どんな生き方も“それでいい”と思えた。


 僕は大学に戻り、久美とは惰性のように付き合い続けていた。

直子さんとは、あの日以来一度も会っていない。


 婚約が本当だったのか、嘘だったのか。

 もうどうでもよかった。


***


 11月のある夜、僕は一人で横浜駅の東口に向かった。

 あのゲートの場所を見たくなったのだ。


 高島埠頭へ続く道を歩くと、万博の跡地はすでに解体が進み、

 あれほど賑わっていた場所が、嘘のように静まり返っていた。


 ゲートがあった場所に立つと、潮風が吹き抜けた。

 そこにはもう、僕たちの詰め所も、誘導灯も、コンパニオンたちの声もない。


 ただ、広い空と、港の匂いだけが残っていた。


 半年間、僕はここで生きていた。

 ここで笑い、怒り、恋をして、傷ついて、また笑った。


 あの頃の僕は、何も知らず、何も分かっていなかった。

 でも確かに、ここで“何か”を手に入れた気がした。


 それが何なのかは、まだ言葉にできない。


***


 東口の歩道橋の上で立ち止まり、港を見下ろした。

 半年間の思い出が、潮風に混じって胸の奥に沈んでいく。


 あの横浜万博で大勢の人たちが笑い、働き、恋をしていたことが、

 今では うたかたの夢 のようだ。

 そして、僕一人だけがその記憶から取り残されているような気がした。


 耳を澄ますと、結城さんの笑い声や、直子さんの「電話ちょうだい」という声が、

 どこか遠くで聞こえた気がした。

 ——幻だと分かっていても。


 ふと思う。

 僕はどこへ行こうとしているのだろう。

 なぜ、ここに来て、一人で立っているのだろう。


 横浜の夜空には、新島で見たようなたくさんの星は輝いていなかった。

 けれど、その暗さが今の僕にはちょうどよかった。


 万博は終わった。

 でも、あの半年間は、これからもずっと僕の中で生き続ける。


読んでいただき、ありがとうございます。

横浜万博での半年間は、僕の人生を大きく変えた時間でした。

当時の空気、匂い、人間関係をできるだけそのまま描きました。


もし楽しんでいただけたら、

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