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星の下  作者: 路傍の石
18/21

夕焼けの飛行船 7

「先輩あの人のこと、好きでしょ?」


星の家からの帰り道、東海林がそんなことを言った。


「え? 工藤さんはそんなんじゃないって。父親の生徒だったんだ」

「ふ~ん、ほんとにそれだけ?」


東海林が珍しく真面目な顔で尋ねた。


「うん。ひょっとしてヤキモチ?」

「違うよ、ちょっと気になっただけ」


東海林は少しも動揺せずにしっかりした口調でそう答えた。


「私はやっぱり屋上のほうが好きだな」

「え? あんなに月の石に食いついてたのに?」

「月の石は別だよ」


そう言った後、東海林はなぜか笑い出した。


「あれレプリカなんだって知ってるのにさ、動けなかったんだよ? 私」


その笑顔は清々しく、見ているだけで心が明るくなるようだった。


「天体望遠鏡は?」

「あれはさ~、なんか拍子抜けしたのと圧倒されたのと……よくわかんない。

 私には屋上から眺める小さい空の方がちょうど良いんだよ。きっと」


電車が駅について、僕らはゆっくり腰を上げた。


「あのさ、明日屋上に来る?」

「うん、行くよ。私それぐらしかすることないし」

「そっか」


僕たちは学校の自転車置き場に向かった。

東海林の自転車を取りに行くためだ。

大した会話のない、静かな帰り道。

学校前の外灯が見えてきた。


「先輩、ついてきてくれてありがとうございました」

「ああ、こちらこそ」


カチャン。

東海林の自転車のカギが開く音。

今だけはなんだか残酷な音だ。


「気を付けて帰ってね。また明日屋上で!」


東海林はふわっと自転車に飛び乗ると、僕に軽く手を振って

車輪の音を軽快に響かせながら消えていった。

その場に残った僕も一息ついた後、歩き出す。


さっきまで綺麗だった星はもう出ていない。

灰色だ、明日は雨かもしれない。

湿った臭いと鳩の鳴き声が僕の周りで渦を巻いた。

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