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夕焼けの飛行船 5
「うわ! これいいね! 欲しい!」
「これレプリカだよ?」
僕が答えると一瞬東海林は固まったが、すぐに頭を横に振った。
「いや、そういう問題じゃなくてロマンチックだよ! すごく!
偽物でもさ、月にあった星と同じ形で角度なんだよ?
人間ってホントに月に行ったんだよね……?」
東海林はもどかしそうにガラスケース越しの石を指でなぞった。
「私今、月にふれそう」
これはただのレプリカだ。いくらでも替えが利く。
だが東海林の透き通った瞳はただの人工物を一瞬で本物の、
いやそれ以上に魅力的なモノへと変えてしまったのだ。
工藤さんと僕は思わず顔を見合わせた。
ぼんやりとライトアップされた月の石が僕らよりはるかに大きく見えたのは
もちろんこれが初めてだった。




