第91話 井戸のそばで
敷布の裏に、細い草が一本ついていた。
エルナはそれを取り、広げた布の上へ毛布を重ねた。端を揃えて巻くと、隣でもルークが荷物をまとめている。
「腰、大丈夫?」
「寝台とは違いますね」
「昨日、座ってた分もありそうだな」
「ルークは歩いていましたけど」
「俺も、寝台の方が好きだよ」
彼が笑い、丸めた布へ紐を回す。エルナも自分の分を結び、鞄へ括りつけた。
火のあったところでは、グレンが灰を確かめていた。フィンは馬の脚を見ている。荷台のそばでは、ニーナが点検具を筒へ当て、蓋の近くの輪を少し動かしていた。
朝の食事に使った器を拭き、木箱へ戻す。バルドが鞄を荷台へ上げると、エルナも後ろへ回った。
薬入れを手前へ向けて収める。ニーナがケースを置けるところを空け、肩紐の端を中へ入れた。
「今日は、昼に村へ寄れる」
馬のそばから、フィンが言った。
「井戸のある店だろ?」
グレンが尋ねる。
「ああ。前に通った時は、飯も出してた」
「そこで馬を休ませよう」
グレンが御者席へ上がる。ニーナも道具を収め、荷台へ乗った。
エルナが段へ足を掛けると、ルークがそばから手を添えてくれる。上がって腰を下ろすまで待ち、それから右脇へ回った。
昨夜、同じ板に並べた二つの器を思い出した。
自分の分には、温もりが長く残っていた。ルークも触れて、違うと言ってくれた。
今日も、どこかで確かめてみたい。
エルナが顔を上げると、ルークがこちらを見ていた。
「何か忘れた?」
「いいえ」
「じゃあ、出られるね」
「はい」
馬が一歩進む。エルナは荷台へ手を添え、動き始めた車輪の音を聞いた。
*
林が途切れると、道の脇に畑が見えた。
低い柵の向こうに葉が並び、その先にいくつかの屋根がある。畑を区切る細い道から、桶を持った人が出てきた。
日が高くなり、荷台の板も朝より温かかった。
フィンが前方で手を上げる。
「右だ。あの店」
街道に面した建物の前に、長い腰掛けが出ていた。屋根の端から布が張られ、その下に卓が二つある。建物の脇には木があり、荷車を寄せられるだけの場所が空いていた。
グレンが馬の歩みを緩める。
店の戸が開き、袖をまくった男が顔を出した。手には、布が一枚ある。
「飯かい?」
「ああ。六人分、頼めるか。馬にも水をやりたい」
「六人ね。少し待ってくれ。井戸はそっちだ」
男が建物の脇を指した。
木の向こうに、石で囲まれた井戸がある。そのそばには、畑へ続く道が見えた。
「馬の桶なら、壁のところに二つあるよ」
「助かる。ラーデンから来たんだが、ここで少し休ませてもらう」
「どうぞ。セレドまで?」
「ああ」
グレンが答え、荷馬車を木陰へ寄せる。店主は六人の顔を一度見てから、戸を開けたまま中へ戻っていった。
車輪が止まると、ニーナが先に下りた。荷台の木箱と縄を確かめている。
エルナも地面へ下り、ゆっくり腰を伸ばした。グレンとフィンは馬を荷馬車から外している。バルドは壁際の桶を取り、ルークと井戸へ向かった。
エルナも、空いた水袋を持って続いた。
井戸の縄には、途中に結び目があった。
濡れている部分より上で、色の違う縄が継がれている。ルークが手を掛け、桶を下ろすと、結び目も井戸の縁を越えていった。
そばにいた女性が、自分の桶を抱え直した。
「もう少し下だよ」
「前は、この辺りで届かなかったか?」
井戸へ来たフィンが尋ねた。女性は彼の顔を見て、少し考える。
「いつ通った?」
「しばらく前。商人の馬車についてた」
「それなら、今はもっと下。縄、足したんだ」
エルナは、井戸の中へ目を向けた。光の届くところから下は暗く、水面はすぐには見えない。
ルークが縄を緩める。少しして、小さな水音がした。
「このくらい?」
「ああ。そこで」
彼が桶を引き上げると、バルドが受け取った。馬用の桶へ移し、片方を持ち上げる。
「こっち、運んでくる」
バルドが木陰へ戻り、フィンももう一つの桶を取った。
ルークは、井戸の桶をもう一度下ろした。エルナは戻ってきた縄を、足元で絡まないようにまとめていく。
「前より、だいぶ下がったんですね」
エルナが言うと、女性は井戸へ顔を向けた。
「そうなんだよ。届かなくなった時は、桶の方が外れたのかと思った」
彼女はそう言い、持っていた桶を持ち直す。
水が縁の近くまで入っていた。両手で運ぶにも、重そうだった。
「そちら、持ちましょうか」
「そこまでだから、大丈夫。畑へ持っていくんだ」
女性が顎で道を示す。すぐ向こうに、柵の一部が外れた畑があった。
ルークが桶を引き上げる。エルナは縁へ手を添え、揺れが落ち着くのを待った。指へ水が触れる。
冷たかった。
小屋の水場で汲む時と似た冷たさが、指先から伝わってくる。エルナは桶を支え、ルークが残りの水を運ぶ器へ分けるのを手伝った。
女性は畑の脇へ桶を置いていた。水を少しずつ根元へ回し、それから倒れた柵のところへ戻る。
エルナは、そちらへ目を向けた。
土が大きく掘り返されていた。葉が根元から倒れ、細い根が日に出ている。柵の下の杭も、一本、斜めに抜けかけていた。
フィンが畑の端へしゃがむ。
「猪か」
「ああ。夜のうちに入られた。見に出たら、まだそこにいたよ」
女性が折れた板を持ち上げる。
「追ったら出ていったけど、朝になったら、この有様さ」
バルドが空の桶を壁際へ戻し、こちらへ来た。
「これ、どこへ運ぶ?」
畑の脇に重ねてある板を指す。
「その杭の横へ。あとで、下へ渡したいんだ」
「じゃあ、ここだな」
彼が板を抱えて運ぶ。女性は一度礼を言い、杭を立て直すために土を寄せた。
ルークが板の端を持つ。
「ここ、押さえておくよ」
「頼む。縄は、その袋にある」
エルナは袋から縄を取り、杭の周りを踏み固めている女性へ渡した。ルークが板を当て直し、端を押さえる。
荷馬車の方を見ると、グレンが馬の背へ手を滑らせていた。ニーナは荷台のそばで点検具を使っている。ここからでも二人と荷が見えた。
エルナは畑へ顔を戻した。
掘り返されたところの向こうには、豆の株が畝に沿って並んでいた。
丸みのある葉の一枚に、小さな斑点があった。
近くの葉にも、似た点が見える。別の株では葉の一部が茶色に変わり、その下には、乾いて縮れた葉が垂れていた。植わっている株の大きさにも差がある。
エルナは畑の外から屈んだ。土には、さっき回した水が残っている。
「こちらも、猪に触られたんですか」
女性が顔を上げる。
「そっちは入られてないよ」
彼女は手の土を払い、エルナの見ている葉へ目を向けた。
「ああ。それね」
指で葉の端を持ち上げる。
裏側にも、小さな斑があった。
「初めは、暑さで弱ってるのかと思ってたんだよ」
「最初は、どんな様子だったんですか」
「小さい点が、葉の表に少し出るくらい。それが裏にも広がって、葉の色まで変わってきてね」
彼女が持ち上げた葉の先は、茶色く乾いていた。その下には、もう枯れた葉がある。
「色が変わった葉から、だんだん枯れていく。水を回しても、止まらないのがあるんだ」
女性は葉から手を離し、少し向こうの列を指した。
「あっちは、まだましなんだけど」
言われて見ると、少し向こうの葉は色が濃かった。地面へ広がり、茎もしっかりしている。
「同じ頃に種をまいたんだよ。あっちは大きくなってるのに、こっちはなかなか育たない」
エルナは、手前の株へ目を戻した。
葉の下に、細い莢が垂れていた。膨らみはまだ小さく、先の方が黒ずんでいる。そこだけ、潰れたように窪んでいた。
「その莢も?」
「ああ。中の豆が育ちきる前に、莢が腐り始めてる。まだ小さい株が腐って、抜いたのもあるよ」
女性は莢には触れず、柵のところへ戻った。
「前にも、こうなったことは?」
「暑さで端が枯れることはあった。でも、こんなに斑が増えて、莢まで傷むのは見なかったな」
彼女は答え、杭へ回した縄を引いた。板を押さえ直し、緩みを確かめる。
「この前、市で会った農家も、似たことを言ってた。向こうの村でも、葉が変だって」
エルナはもう一度、斑のある葉を見る。
「何かの病気なんでしょうか」
「かもしれない。あんた、わかる?」
「薬草は扱いますが、畑の病気は詳しくなくて」
「そうか」
女性は頷き、縄の端を結んだ。
「猪なら、柵を直せるんだけどね」
そう言いながら、板へ手を当てる。ルークが押さえていたところから手を離すと、板はそのまま収まっていた。
「ここは、もう大丈夫そうだよ」
「助かった。あとは、こっちをやる」
女性は次の杭を指した。バルドが残りの板を近くへ寄せる。
畑の脇には、まだ水の入った桶があった。女性はそれを取り、元気な葉の並ぶところへ運んでいく。
エルナは立ち上がり、女性が水を運んでいる列と、斑のある葉とを見比べた。
すぐ隣で育っているのに、何が違うのだろう。
小屋の山では、以前なら採れたところに薬草が少なくなっていた。ここでは、種をまき、水を回して世話をしている畑で、葉が傷み、まだ細い莢まで腐り始めている。
元気に見える列の葉にも、初めの小さな斑は出ているのだろうか。ここから眺めただけでは、そこまでは分からなかった。
もう少し近くで、葉を見比べておきたかった。
「ありがとう。飯、もうすぐだろ」
女性がこちらへ声をかける。
店の戸から、鍋を置く音が聞こえていた。店主が顔を出す。
「待たせたね。手を洗ったら、こっちへ」
グレンたちも、卓のそばへ戻ってきた。エルナは女性へ挨拶し、ルークと井戸へ向かった。
彼の手には、縄を引いたところへ土がついていた。
水を少し受けて洗う。エルナも手を洗い、空いた水袋を取った。
「今、入れておこうか」
ルークが言った。
「はい」
桶から水を受ける。水袋の口を閉じ、井戸の桶へ手を添えた。
まだ、指先へ冷たさが届く。
ルークも自分の水袋を閉め、こちらへ目を向けた。それから少し声を落とす。
「この水でも、できるかな」
エルナは彼を見る。
「昨日の?」
「うん。温かいのは残っただろ。冷たいのも、同じなのかなって」
エルナも気になっていた。桶へ触れた時から、この冷たさを少し残せないだろうかと思っていた。
「試してみたいです」
「じゃあ、器を取ってくる」
ルークが荷馬車へ戻り、木箱から二つ出してきた。昨夜使った、同じ形の器だった。
エルナは同じくらいずつ水を分ける。二人で卓の端へ運び、木陰になっている同じ板の上へ並べた。
グレンたちは別の卓へ腰を下ろしている。ニーナの席からは、荷台が見えていた。
エルナは器へ指を添えた。
この冷たさを、ここへ残す。
熱を動かそうとは思わなかった。
指の下に、昨夜と似た小さな手応えがあった。
彼女が顔を上げると、ルークもこちらを見ている。
「……少し、ありました」
「じゃあ、置いとこう」
ルークが隣の椅子を引いた。
「俺の、こっちね」
「わかりました」
エルナも手を離し、腰を下ろした。
店主がパンの皿を運んでくる。その後ろには、野菜と豆を煮た器が並んでいた。薄く切った干し肉も入っている。
「器の方、熱いから気をつけて」
「ありがとうございます」
エルナは匙を取り、湯気の立つ料理へ入れた。
根菜は柔らかかった。豆を一つ、匙で押すと、簡単に崩れる。口へ運ぶと塩味が広がり、空いていた腹へ温かいものが入った。
ルークも食べ始めている。バルドはパンをちぎり、皿の端についた汁を拭った。
向こうの卓で、フィンが店主へ声をかける。
「この辺で、獣の話は増えてる?」
「畑へ入られた話なら、よく聞くね。あんたたちも、そっちを見てきたんだろ」
「ああ。柵の下が、抜けてた」
「直しても、別の畑へ回るからな」
店主は空いた皿を寄せた。それから、グレンへ顔を向ける。
「ところで、ラーデンから来たって言ったね」
「ああ」
「あの火事は、本当なのかい」
エルナの匙が、少しだけ止まった。
店主は気づかず、布で卓の端を拭いている。
「ここを通った行商人が話してたんだよ。街の外で、大きな獣が火を撒いたって」
「火事はあった。今も、壊れたところを直している」
「そうか。話が大きくなってるのかと思った」
店主は布を折り直した。
「魔女が助けたっていうのも?」
グレンが一度頷いた。
「大きな火が止まって、その後は皆で消した」
「雪っていうものが降ったんだってね。白くて、冷たい。俺は聞いたこともなかったけど」
「俺も、初めて見た」
バルドが口を挟んだ。
「手に落ちたら、水になったぞ」
「見たのかい」
「ああ」
店主はバルドの顔を見て、それから空へ目を向けた。布の張られていないところには、明るい空が広がっている。
「白銀の長い髪をした、若い魔女だったそうだ。雪の魔女って、呼ばれてるらしいな」
その呼び名が、卓の向こうから聞こえた。
エルナは器へ目を落とす。
髪は布の中にある。フードの縁から店主を見ると、彼はグレンへ話を続けていた。
「皆、助かったのかい」
「亡くなった人はいない。ただ、焼けた家や畑はある」
「そうか……」
店主は短く息を吐き、皿を持ち上げた。
「人が助かったのは、よかった」
グレンが頷く。
店主は中へ戻り、すぐに水の入った器を持って出てきた。向こうの卓へ置き、また仕事へ戻っていく。
エルナは匙を動かした。
ラーデンで聞いた名前が、もうここへ来ていた。
自分たちより先に。
ルークがこちらへ顔を向ける。何も聞かず、パンの皿を少し寄せてくれた。
エルナは一切れ取り、礼を言った。
パンを汁へ浸す。まだ根菜が残っていたので、匙で寄せて、もう一口食べた。
店主が空いた器を取りに来る。
「この豆は、あちらの畑からですか」
エルナが尋ねると、彼も畑の方を見た。
「ああ。傷んでいないものを、ここでも買ってる。粒が小さくても、煮るには困らないからね」
「ほかのものは?」
「足りない分は、セレドへの便で頼む。前ほど安くはないけどな」
店主は器を重ね、空いた皿も持って中へ戻った。
エルナは残りを口へ運ぶ。葉の傷んだ豆の畝にも、元気な列があった。女性はそこへ水を運んでいた。
器を空にして、匙を置く。
ルークはもう食べ終わり、卓の端へ目を向けていた。
「どうなったかな」
声を落として言う。
エルナも並んだ二つの器を見る。
日が動いていたが、どちらも木陰に残っている。表面の水も、同じくらいだった。
エルナはまず、ルークの分へ手を添えた。それから自分の分へ触れる。
指を戻し、もう一度確かめた。
「こちらの方が、冷たいです」
ルークも両方へ触れた。
「……うん。汲んだ時みたいだ」
彼の器も、熱くなっているわけではない。ただ、初めの冷たさは薄くなっていた。
エルナの分には、その時の冷たさがまだ残っている。
井戸から引き上げた桶を支えた時の感触と、よく似ていた。
「温かい方だけじゃ、なさそうだね」
ルークが言った。
「はい」
エルナは自分の器を見た。
昨夜は温もりが残った。今日は、冷たさが残っている。
どちらも、その時にあったものだ。
「今の温度を、残しているんでしょうか」
「そうかもしれない」
ルークは答え、自分の器を持ち直した。
「触ってた時、もっと冷たくなる感じはなかった?」
「ありませんでした」
エルナも手を離す。
熱を移す時の流れは、今度も感じなかった。何かを少し押さえたような、あの手応えだけだった。
ニーナが席を立ち、荷馬車へ向かう。フィンも馬のそばへ戻っていった。
エルナは器を卓へ置いたまま、水袋の紐を確かめた。ルークは使った皿を重ね、店主へ渡している。
グレンが支払いを済ませる間に、バルドが買い足した食料を受け取った。紙で包んだパンと、干し肉の包みがある。
エルナも立ち上がり、鞄を肩へ掛けた。水袋を卓へ置き、自分の器を取る。
先ほどより、冷たさが少し薄くなっていた。
彼女が指を添え直すと、ルークもこちらを見た。
「戻ってきた?」
「少し」
「昨日のも、そうだったな」
エルナは頷き、水を飲んだ。
まだ冷たかった。口の中から喉へ下り、食後の温かさを少し和らげる。
ルークも自分の分を飲み、空いた器を受け取った。店主に声をかけて洗い、布で拭いてから重ねる。
エルナが水袋へ手を当てると、彼が見た。
「そっちも残せたら、道で飲む時によさそう」
「……そうですね」
今の二つとは、入れ物も量も違う。
それでも、次に気になるものができた。
エルナが水袋を鞄へ収めると、ルークは小さく笑い、木箱へ器を戻しに行った。
その背中を見ながら、エルナも荷馬車へ向かった。
ニーナが点検具をケースへ収める。フィンは馬の具を直し、グレンが手綱を取っていた。
バルドが食料の包みを荷台へ置く。
「こっちで邪魔にならないか?」
「ええ。箱の脇なら大丈夫」
ニーナが答え、エルナも鞄を板の下へ戻した。足元へ肩紐が出ていないことを確かめる。
ルークの手を借りて荷台へ上がると、畑が見えた。
女性は次の杭のそばへしゃがんでいた。こちらに気づいて手を上げ、また縄へ顔を戻す。
エルナも小さく手を上げた。
井戸へ来た人が、桶を下ろしている。継ぎ足された縄の結び目が、石の縁を越えた。
「気をつけてな」
店主が戸口から声をかけた。
グレンが礼を言い、馬を進ませる。
荷馬車が街道へ戻ると、ルークも右脇を歩き始めた。フィンは前へ出て、バルドは後ろへ回る。
エルナは畑を振り返った。
掘り返されたところの向こうに、変色した葉が並んでいた。猪の入っていない場所にも、枯れた葉がある。
まだ細いまま黒ずんだ、豆の莢も目に残っていた。
小屋の水場。山の薬草。ラーデンの店で小さくなったパン。
それらに、今日見た畑と、近くの村でも似た話があるという女性の言葉が重なる。
ここでも、変わっている。
セレドで話を聞けるなら、あの魔獣が現れた山だけでなく、ほかの土地の水や畑のことも尋ねたい。
車輪が小さな石を越えた。
エルナは縁へ手を添え、前を見る。荷台の向こうへ、まだ知らない道が続いていた。




