第97話「新しい命」
ある日——玲が、柊に告げた。
◇
「柊——話があるの」
玲の表情は——少し緊張していた。
「どうした——」
「私——妊娠したみたい」
柊は——一瞬、言葉を失った。
「妊娠——」
「うん。病院で——確認した」
柊の目から——涙が溢れた。
「本当か——」
「本当よ」
玲も涙を流していた。
「よかった——」
二人は——抱き合った。
◇
結婚して——四年。
子どもは——できないかもしれないと、思っていた。
でも——ようやく、新しい命が宿った。
「嬉しい——」
柊が言った。
「私も——」
「父親に——なるんだな」
「そうよ」
玲は微笑んだ。
「いいお父さんに——なってね」
「努力する——」
◇
職場で——報告した。
「おめでとうございます——」
田所が言った。
「ありがとう——」
「水無瀬さんが——父親になるんですね」
「そうだな——」
柊は照れくさそうに笑った。
◇
残響たちにも——伝えた。
「柊おじさん——赤ちゃんができたの?」
美優が嬉しそうに言った。
「ああ——」
「すごい——おめでとう」
「ありがとう——」
「私——赤ちゃん、見てみたい」
柊は微笑んだ。
「生まれたら——会わせるよ」
「本当——?」
「約束する——」
美優は——嬉しそうに跳ねた。
◇
夜、柊は考え込んでいた。
新しい命——それは、希望だった。
でも——同時に、責任も感じていた。
「玲——」
「何——」
「俺——いい父親に、なれるかな」
「なれるわよ——」
「どうして——そう思う」
「だって——」
玲は柊を見た。
「柊は——残響たちを、ずっと大切にしてきた」
「……」
「美優のことも——自分の子どものように、可愛がってる」
「ああ——」
「だから——大丈夫。いい父親になれる」
柊は——安心した。
「ありがとう——」
「私こそ——」
玲は柊の手を握った。
「一緒に——頑張ろうね」
「ああ——」
◇
新しい命が——宿った。
死者と向き合う仕事をしながら——新しい生命を迎える。
それは——不思議なことだった。
でも——柊は思った。
死と生は——繋がっている。
死者を送り出し——新しい命を迎える。
それが——人間の営みなのだと。




