第96話「論争」
ドキュメンタリーの放送後——社会的な論争が、起きた。
◇
「残響技術は——倫理的に問題がある」
ある学者が主張した。
「死者を——永遠に繋ぎ止めることは、自然の摂理に反する」
テレビ討論番組で——激しい議論が交わされた。
「残響は——死者の尊厳を守っている」
別の学者が反論した。
「遺族が——故人と繋がり続けられる。それは——素晴らしいことだ」
「でも——残響自身は、どうなのか。永遠に存在し続けることを——望んでいるのか」
◇
柊は——この論争を、複雑な気持ちで見ていた。
「どっちも——正しいんだよな」
柊が呟いた。
「どういう意味——」
玲が尋ねた。
「残響技術には——光と影がある。どちらか一方だけじゃない」
「お父さんも——そう言ってた」
「ああ——」
柊は窓の外を見た。
「だから——バランスが、大切なんだ」
◇
柊は——記者会見に出ることにした。
現場からの声を——直接、伝えるために。
「残響庭園で——十年以上、働いてきました」
柊が話し始めた。
「その経験から——言えることがあります」
記者たちが——メモを取っていた。
「残響は——確かに、複雑な存在です。生きてはいない。でも、存在している」
「彼らは——幸せなのですか」
「人それぞれです。幸せな残響もいます。寂しさを感じる残響もいます」
「成仏を——望む残響は」
「います。そして——私たちは、その意思を尊重しています」
柊は深呼吸した。
「大切なのは——残響の意思を、尊重すること。そして——遺族との繋がりを、守ること」
「永遠に——存在し続けることが、良いとは限らない」
「その通りです。だから——成仏という選択肢も、用意しています」
◇
記者会見後——反響があった。
「現場の声が——聞けてよかった」
「バランスの取れた——意見だった」
しかし——批判も続いた。
「結局——死者を利用しているのでは」
「ビジネスのために——残響を維持している」
柊は——疲れを感じていた。
「難しいな——」
「そうね——」
玲が言った。
「全員を——納得させることは、できない」
「わかってる。でも——」
「でも?」
「俺たちは——残響たちのために、働いている。それだけは——確かだ」
玲は頷いた。
「その思いが——あれば、大丈夫」
「ああ——」
◇
論争は——しばらく続いた。
しかし——徐々に、落ち着いていった。
残響技術が——社会に受け入れられていく。
賛否両論を——抱えながら。
それが——現実だった。




