表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残響の庭  作者: とま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/120

第94話「父の遺志」

 ある日——柊は、父の研究室を訪れた。


          ◇


 父、水無瀬蒼太が使っていた研究室。


 今は——資料室として、保存されていた。


「久しぶりだな——」


 柊は部屋を見回した。


 父の痕跡が——あちこちに残っていた。


 書籍、メモ、古い端末。


          ◇


 柊は——父のメモを、読み返していた。


 残響技術の開発に関する——膨大な記録。


 その中に——こんな一節があった。


『残響は——死者の意識の近似である。しかし——それだけではない』


『残響は——生者と死者を、繋ぐ架け橋である』


『この架け橋を通じて——人間は、死を超えて、繋がり続けることができる』


 柊は——胸が熱くなった。


「父さん——」


          ◇


 さらに読み進めた。


『私は——この技術を、善きことに使いたい』


『死者と生者が——互いを思いやり、繋がり続ける世界を、作りたい』


『しかし——同時に、恐れもある』


『この技術が——悪用されることを』


『死者が——永遠に、囚われ続けることを』


 柊は考え込んだ。


 父は——残響技術の光と影を、両方見ていた。


          ◇


 最後のページには——こう書かれていた。


『柊へ


 もし、お前がこれを読んでいるなら——私は、もういないのだろう。


 残響技術は——お前に託す。


 この技術を——正しく使ってほしい。


 死者が——安らかに眠れるように。

 生者が——死者を想い続けられるように。


 そして——いつか、死者と生者が、穏やかに別れられるように。


 それが——私の願いだ。


 父より』


 柊は——涙を流した。


「父さん——」


          ◇


 部屋を出ると——玲が待っていた。


「どうだった——」


「父さんの——遺志が、わかった気がする」


「遺志——」


「死者と生者を——繋ぐこと。そして——穏やかに、別れられるようにすること」


 柊は玲を見た。


「俺たちが——やってきたこと。間違ってなかった」


「……」


「残響たちを——繋ぐシステム。成仏を——見届けること」


「それが——お父さんの願いだった」


「ああ——」


 柊は深呼吸した。


「俺は——父さんの遺志を、継いでいく」


「私も——一緒に」


 玲は柊の手を握った。


「ありがとう——」


          ◇


 柊は——空を見上げた。


 秋の雲が——ゆっくりと、流れていく。


「父さん——見てるか」


 返事はなかった。


 でも——どこかで、父が微笑んでいる気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ