第93話「美優の成長」
美優は——成長していた。
残響として——精神的に。
◇
「柊おじさん——」
美優が声をかけてきた。
「どうした——」
「私——十五歳になったんだ」
柊は微笑んだ。
「おめでとう——」
「ありがとう」
美優は嬉しそうだった。
彼女は——八歳で亡くなった。
でも、残響として——七年を過ごしてきた。
精神的には——十五歳相当になっていた。
◇
「最近——お父さんは、来てる?」
柊が尋ねた。
「うん。毎週——来てくれる」
「よかった——」
「でも——」
美優は少し寂しそうな表情をした。
「お父さん——再婚したんだ」
「そうか——」
「新しいお母さんと——弟ができた」
柊は黙って聞いていた。
「私——嬉しいんだ。お父さんが、幸せそうで」
「でも——」
「うん。少し——寂しい」
◇
柊は——美優の話を、ゆっくり聞いた。
彼女は——複雑な気持ちを抱えていた。
父の幸せを願う気持ち。
でも——自分がいない家族を、羨む気持ち。
「美優——」
「何——」
「お父さんは——お前のこと、忘れてないよ」
「わかってる——」
「毎週、会いに来てくれる。それは——お前を、大切に思ってるから」
「うん——」
美優は涙を流した。
「私——お父さんが、幸せならいい」
「……」
「でも——時々、寂しくなるの」
柊は——美優を抱きしめた。
「それで、いいんだ——」
「柊おじさん——」
「寂しい時は——寂しいって言っていい」
「……」
「俺たちが——いるから」
美優は——柊にしがみついて、泣いた。
◇
夜、柊は玲に話した。
「美優が——寂しがってた」
「お父さんの——再婚」
「ああ——」
「複雑だよね——」
玲は溜息をついた。
「残響は——成長する。でも、家族との関係は——変化していく」
「ああ——」
「美優は——十五歳になった。でも、お父さんには——新しい家族ができた」
「そのギャップが——」
「辛いよね」
柊は考え込んだ。
「俺たちに——何ができる」
「そばにいること——かな」
「そばに——」
「美優が——寂しい時、話を聞く。一緒にいる」
玲は微笑んだ。
「それが——俺たちにできること」
「そうだな——」
◇
翌日、柊は美優に会いに行った。
「調子は——どうだ」
「うん——大丈夫」
美優は微笑んだ。
「昨日——泣いちゃって、ごめんね」
「謝らなくていい——」
「柊おじさん——」
「何だ——」
「ありがとう。話を——聞いてくれて」
柊は頷いた。
「いつでも——話においで」
「うん——」
美優は——嬉しそうに笑った。
少女は——少しずつ、大人になっていた。




