第85話「ガイドの条件」
ガイドの候補を——探し始めた。
◇
「ガイドになれる条件——何だと思う?」
柊が玲に尋ねた。
「いくつか——仮説がある」
玲が答えた。
「まず——残響との繋がりが深い人」
「遺族——」
「そう。残響に——強い思い入れがある人」
「なぜ——」
「意識を開放する時——残響への共感が、必要だから」
玲は続けた。
「次に——精神的に安定している人」
「安定——」
「共鳴の中で——自分を保つ必要がある。不安定だと——」
「巻き込まれる」
「そう」
◇
桜の園のスタッフに——声をかけた。
「ガイドの実験に——参加してくれる人を、探しています」
田所が手を挙げた。
「俺——やってみたいです」
「田所——」
「水無瀬さんができるなら——俺もできるかもしれない」
他にも——数人のスタッフが、協力を申し出た。
全員、残響との関わりが長い人たちだった。
◇
一人ずつ——実験を行った。
結果は——様々だった。
「田所は——ガイドの素質がある」
玲が分析した。
「残響との調和——うまくいってた」
「でも——他の二人は」
「難しいみたい。意識を開放しようとすると——不安定になる」
柊は考え込んだ。
「素質がある人と——ない人がいるのか」
「そうみたい。何が違うのかは——まだ、わからないけど」
◇
田所と——話をした。
「田所——なぜ、うまくいったと思う?」
「わかりません。でも——」
田所は考えながら言った。
「残響たちのこと——好きなんです」
「好き——」
「仕事として関わってるだけじゃなく。本当に——大切に思ってる」
「……」
「だから——彼らと繋がることが、自然に感じられた」
柊は頷いた。
「俺も——同じだ」
「水無瀬さん——」
「母さんが——残響だった。だから——残響たちへの思いが、強い」
「それが——ガイドの条件なのかもしれませんね」
◇
玲に報告した。
「ガイドの条件——残響への深い愛情かもしれない」
「愛情——」
「技術的なことじゃなく——感情的な繋がり」
玲は考え込んだ。
「データでは——測れないね」
「ああ——」
「でも——それが、一番大切なことかもしれない」
柊は頷いた。
「残響たちを——本当に、大切に思う人」
「その人が——ガイドになれる」
「そうかもしれない」
◇
柊は——窓の外を見た。
夕日が——沈んでいく。
「俺と田所——二人なら、何人の残響を導ける?」
「計算してみるわ」
玲は端末を操作した。
「負担を分散すれば——十人くらいは、同時にいけるかもしれない」
「十人——」
「まだ——少ないね」
「ああ——」
柊は溜息をついた。
「でも——始められる」
「そうね」
玲は微笑んだ。
「小さな一歩から——始めよう」




