第84話「調和」
何かが——変わった。
◇
柊は——不思議な感覚に包まれていた。
自分の意識が——広がっていく。
残響たちの意識が——近くに感じられる。
しかし——溶け合うのではなく、寄り添っている。
「これは——」
柊は呟いた。
「調和——」
玲の声が聞こえた。
「柊——データを見てる。振動数が——調和してる」
「調和——」
「完全に一致じゃなく——和音になってる。美しい——」
柊は目を閉じた。
確かに——残響たちの意識が、重なり合っている。
でも——それぞれの個性は、保たれている。
「これが——」
残響の一人が言った。
「繋がりって——こういうことなのか」
「寂しくない——」
別の残響が言った。
「みんな——一緒にいる」
◇
調和は——しばらく続いた。
柊は——ガイドとして、その状態を維持していた。
意識を開放しながら——でも、自分自身を保ちながら。
それは——難しいバランスだった。
「柊——そろそろ、終わりにしよう」
玲の声が聞こえた。
「長く続けると——負担が大きくなる」
「わかった——」
柊は——ゆっくりと、意識を引き戻した。
残響たちとの繋がりが——薄れていく。
しかし——完全には、消えなかった。
どこかで——まだ、繋がっている感覚があった。
◇
VR空間からログアウトした。
玲が——柊を見つめていた。
「どうだった——」
「すごかった——」
柊は深呼吸した。
「残響たちの意識が——感じられた。寄り添っていた」
「調和——できてた」
「ああ——」
「暴走は——しなかった」
「しなかった。ガイドがいれば——制御できる」
玲は微笑んだ。
「成功——だね」
「ああ——」
柊も微笑んだ。
しかし——同時に、疲労も感じていた。
「でも——負担は大きい」
「そうみたいね。データを見ると——柊の脳波が、かなり乱れてた」
「大丈夫だったのか——」
「今回は——短時間だったから。でも、長時間は——」
玲は真剣な表情になった。
「危険かもしれない」
◇
実験結果を——分析した。
「ガイドがいれば——共鳴を制御できる」
玲がまとめた。
「でも——ガイドの負担が大きい」
「どうすれば——軽減できる」
「わからない。でも——」
玲は考え込んだ。
「複数のガイドで——分担できるかもしれない」
「複数——」
「一人じゃなく——何人かで。負担を分け合う」
「それなら——」
「可能性はある。でも——」
玲は柊を見た。
「ガイドになれる人間が——どれだけいるか」
「俺以外にも——できるのか」
「わからない。試してみないと——」
柊は頷いた。
新たな課題が——見えてきた。




