第83話「ガイドの役割」
柊は——ガイドの役割について、深く考え始めた。
◇
「人間が——共鳴のガイドになる」
柊は呟いた。
「具体的には——何をするんだ」
「まだ——わからない」
玲が答えた。
「でも——いくつか、仮説がある」
「聞かせてくれ」
「まず——ガイドは、共鳴の中に入る必要がある」
「共鳴の中——」
「VR空間で——残響たちと、一緒にいる。その状態で——」
玲は言葉を選んだ。
「自分の意識を——残響たちに、開放する」
「開放——」
「自分の記憶、感情、意識——それを、残響たちと共有する」
柊は眉をひそめた。
「危険じゃないか」
「危険だと思う。でも——」
玲は柊を見た。
「それが——唯一の方法かもしれない」
◇
柊は——考え込んだ。
自分の意識を——残響たちに開放する。
それは——自分自身を、さらけ出すということだ。
「怖いか——」
玲が尋ねた。
「正直——怖い」
「やめる——?」
「いや——」
柊は首を振った。
「やる。残響たちのために——」
「柊——」
「母さんも——祖母も——松田さんも。みんな、残響だった」
「……」
「彼らが——安心して、帰れる場所を作りたい」
玲は——柊の手を握った。
「一緒に——やろう」
「ありがとう——」
◇
準備が始まった。
まず——小規模な実験から、始めることにした。
「最初は——三人の残響で」
玲が説明した。
「共鳴が起きても——三人なら、制御しやすい」
「わかった」
「柊は——VR空間に入って、三人と対話する」
「そして——意識を開放する」
「そう。でも——完全にじゃなく、少しずつ」
玲は真剣な表情をした。
「何か異常を感じたら——すぐに、教えて」
「わかった」
◇
実験の日が——来た。
柊は——VR空間にログインした。
三人の残響が——待っていた。
全員、長期間存在していた残響だった。
「よろしく——お願いします」
柊が言った。
「こちらこそ——」
残響たちが答えた。
「今日は——ゆっくり、話をしましょう」
柊は——深呼吸した。
そして——話し始めた。
自分の母のこと。祖母のこと。残響との日々のこと。
残響たちも——自分の話をした。
遺族のこと。存在の意味のこと。帰りたいという感覚のこと。
対話は——次第に、深くなっていった。
◇
「柊——」
玲の声が、ヘッドセットから聞こえた。
「振動数が——上がってる。ゆっくり——意識を、開放してみて」
柊は——目を閉じた。
自分の意識を——残響たちに、開放する。
何を感じているか。何を考えているか。
それを——隠さずに、伝える。
「俺は——あなたたちを、助けたい」
柊は言った。
「帰る場所を——一緒に、見つけたい」
残響たちは——柊を見つめた。
「ありがとう——」
その瞬間——何かが、変わった。




