第79話「研究の再開」
柊と玲は——記憶の雨について、本格的に調査を始めた。
◇
まず——過去のデータを、詳細に分析した。
「見て——これ」
玲が画面を指差した。
「記憶の雨が起きた時——データの流れに、パターンがある」
「パターン——?」
「最初は——ランダムに見えた。でも、よく見ると——」
玲はグラフを表示した。
「渦を巻くように——流れてる」
柊は画面を見つめた。
確かに——データの流れが、螺旋状のパターンを描いていた。
「これは——何を意味してるんだ」
「わからない。でも——」
玲は考え込んだ。
「偶然じゃない。何か——法則がある」
◇
さらに分析を進めた。
「残響のデータは——通常、独立している」
玲が説明した。
「でも——記憶の雨の時、境界が崩れた」
「なぜ——崩れた」
「仮説だけど——残響たちが、『繋がりたい』と思ったから」
「意識が——物理的なデータに、影響を与えた?」
「可能性はある。残響の意識は——データとして存在してる。その意識が——」
玲は言葉を選んだ。
「データの境界を——超えようとした」
◇
柊は——ふと、思いついた。
「父さんの研究に——似たような記述がなかったか」
「お父さんの——」
「残響の意識が——データに影響を与える。そういう現象」
玲は父の研究記録を検索した。
「あった——」
画面に——古い文書が表示された。
『残響の意識は——単なるデータではない。データを媒介として存在する、何らかのパターンである』
『このパターンは——条件が揃えば、データの境界を超えて、拡散する可能性がある』
『これを——「意識の共鳴」と呼ぶことにする』
柊は息を呑んだ。
「父さんは——気づいていた」
「意識の共鳴——」
「記憶の雨は——これだったのか」
◇
さらに記録を読み進めた。
『意識の共鳴は——制御不能な現象として、発生する可能性がある』
『しかし——適切な条件を整えれば、制御できる可能性もある』
『研究を続ける必要がある』
そこで——記録は、途切れていた。
「父さんは——研究を、完成させられなかった」
柊が呟いた。
「でも——方向性は、示されてる」
玲が言った。
「意識の共鳴を——制御できれば」
「残響たちが——安全に、繋がれる」
「そう。それが——」
玲は柊を見た。
「残響たちの——帰る場所になるかもしれない」
◇
柊は——決意した。
「父さんの研究を——引き継ごう」
「危険かもしれない——」
「わかってる。でも——」
柊は窓の外を見た。
「残響たちが——待ってる。答えを」
「柊——」
「俺は——父さんの息子だ。この研究を——完成させる」
玲は——柊の手を握った。
「一緒に——やろう」
「ありがとう——」
新たな研究が——始まった。




