第78話「繋がりの本質」
柊は——考え続けていた。
残響たちが求める「帰る場所」——それは、何なのか。
◇
「玲——ちょっと、聞いていいか」
ある夜、柊は玲に尋ねた。
「何——」
「俺たちは——死んだ後、どこに行くと思う?」
玲は少し驚いた顔をした。
「急に——どうしたの」
「ずっと——考えてる。残響たちが、帰りたい場所」
「……」
「母さんの残響も——最後、穏やかだった。どこかに——帰る感じだった」
玲は考え込んだ。
「私は——科学者だから。死後の世界とか——信じてなかった」
「今は——?」
「わからない。でも——」
玲は柊を見た。
「残響たちを見てると——何かがある気がする」
「何か——」
「言葉にするのは——難しい。でも——」
玲は言葉を選んだ。
「人間の意識は——死んで、終わりじゃないのかもしれない」
◇
柊は——母の残響のことを、思い出した。
母は——最後、何を感じていたのだろう。
『柊——ありがとう』
『私は——もう、大丈夫』
『どこかに——帰れる気がするの』
母は——穏やかに、消えていった。
恐怖や——苦しみは、なかった。
「帰る場所——」
母は——どこに、帰ったのだろう。
◇
「柊——」
玲が言った。
「残響たちが求めているのは——繋がりだと思う」
「繋がり——?」
「遺族との繋がり。残響同士の繋がり。そして——」
玲は窓の外を見た。
「もっと、大きな繋がり」
「もっと——大きな」
「わからないけど——全体との繋がり。宇宙との繋がり。そういう——」
玲は首を振った。
「うまく——言えない」
「でも——なんとなく、わかる」
柊は頷いた。
「残響たちは——孤独なんだ。個別の存在として、閉じ込められて」
「そう。でも——本当は、繋がりたい」
「全体と——」
「ええ。だから——記憶の雨が、起きた時、佐々木さんは喜んでいた」
「みんなと——繋がったから」
「そう」
◇
柊は考え込んだ。
「でも——記憶の雨は、危険だった。システムが——崩壊しかけた」
「制御できなかった——から」
「制御できれば——いいのか?」
「わからない。でも——」
玲は柊を見た。
「残響たちが——安全に、繋がれる方法があれば」
「それが——帰る場所になるかもしれない」
「可能性は——ある」
柊は立ち上がった。
「調べてみよう」
「何を——」
「記憶の雨が——なぜ起きたのか。そして——制御できるのか」
「危険じゃない?」
「わからない。でも——」
柊は玲を見た。
「このままじゃ——何も変わらない」
玲は——しばらく考えた。
「わかった。一緒に——調べよう」
二人は——新たな研究を、始めることにした。




