表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残響の庭  作者: とま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/120

第75話「声を集めて」

 残響たちへの聞き取り調査が——本格的に始まった。


          ◇


 玲が中心となって、アンケートを設計した。


 質問項目は——シンプルだった。


 一、存在していて、幸せだと感じますか。

 二、「帰りたい」と思うことがありますか。

 三、何があれば、もっと満足できますか。


「シンプルすぎないか——」


 柊が尋ねた。


「複雑にすると——本音が出ない」


 玲が答えた。


「まずは——率直な声を、集めたい」


          ◇


 アンケートは——全残響に配布された。


 回答率は——驚くほど高かった。


 九十八パーセント。


「みんな——答えてくれた」


「声を——聞いてほしかったのかもしれない」


 玲は回答を分析した。


「見て——これ」


 柊は画面を覗き込んだ。


 「幸せだと感じる」——四十二パーセント

 「どちらでもない」——三十五パーセント

 「幸せではない」——二十三パーセント


「四割弱しか——幸せを感じていない」


「そう。そして——」


 玲は次のデータを表示した。


 「帰りたいと思う」——五十一パーセント


「半数以上が——帰りたいと思ってる」


 柊は言葉を失った。


「こんなに——多いとは」


「存在年数が長いほど——割合が高くなる傾向がある」


「長くいるほど——帰りたくなる」


「そう。遺族との面会頻度とも——相関がある」


          ◇


 自由回答欄には——様々な声が書かれていた。


『遺族に会えるのは嬉しい。でも——それだけでは、満たされない』

『自分が何者なのか——わからなくなることがある』

『懐かしい場所に——帰りたい。どこかは、わからないけど』

『もう——疲れた』

『存在し続ける意味が——わからない』

『消えても——誰も、悲しまないと思う』


 柊は——一つ一つの声を、読んだ。


 重かった。


 残響たちの苦しみが——伝わってきた。


          ◇


 しかし——希望の声も、あった。


『他の残響と——話せるようになって、楽になった』

『交流会が——楽しみ』

『オンライン面会で——毎日、家族と話せるようになった』

『ここにいてよかった——と思える瞬間がある』


「ポジティブな声も——ある」


 玲が言った。


「繋がり——がキーワードかもしれない」


「繋がり——」


「遺族との繋がり。残響同士の繋がり。それがある残響は——比較的、安定してる」


「じゃあ——繋がりを、強化すれば」


「改善する可能性は——ある」


 玲は考え込んだ。


「でも——それだけでは、足りないかもしれない」


「どういう意味だ」


「『帰りたい』という感覚——これは、繋がりだけでは、解消できない気がする」


「じゃあ——何が」


「わからない。でも——」


 玲は柊を見た。


「佐々木さんの言葉——覚えてる?」


「『みんなと繋がっている』——」


「そう。それと——『懐かしい場所に帰る』」


 玲は窓の外を見た。


「残響たちが求めている『帰る場所』——それが、何なのか」


「まだ——わからない」


「ええ。でも——」


 玲は言った。


「それを——見つけなければならない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ