第67話「コミュニティ」
二つ目の対策——残響同士のコミュニティ強化も、進んでいた。
玲が中心となって、交流イベントを企画した。
◇
「第一回——残響交流会を、開催します」
VR空間内の広場。数十人の残響が集まっていた。
柊と玲も、立ち会っていた。
「今日は——皆さんに、交流していただく場を設けました」
玲が説明した。
「同じ残響として——話をしたり、悩みを共有したり」
「悩みを共有——?」
ある残響が尋ねた。
「はい。皆さんが感じていること——『帰りたい』という感覚も、含めて」
会場がざわついた。
「みんな——同じことを、感じてたんだ」
「私だけじゃなかったのね」
残響たちが、互いに顔を見合わせた。
「まずは——自己紹介から始めましょう。ゆっくり——」
◇
交流会は——予想以上にうまくいった。
残響たちは——互いの話を聞き、共感し合った。
「私も——最近、家族が来なくなって」
「俺もだ。寂しいよな」
「でも——こうやって、話せる仲間がいると、少し楽になる」
「ああ——同じ気持ちの人がいると、安心する」
柊は——会場の様子を見守っていた。
「うまくいってるな——」
「ええ。残響同士——支え合えてる」
玲も満足そうだった。
「これを——定期的に開催すれば」
「効果があるかもしれない」
◇
交流会の後、柊は佐々木正雄と話をした。
「今日——どうでしたか?」
「良かった。みんな——同じ気持ちだったんだな」
「ああ——」
「俺——一人で悩んでた。でも、みんなも同じだって、わかった」
佐々木は微笑んだ。
「少し——楽になった」
「よかった」
「それに——千代とも、毎日話せるようになった」
「オンライン面会——」
「ああ。ありがたい」
佐々木は柊を見つめた。
「水無瀬さん——ありがとう」
「俺は——何も」
「いや。俺たちのこと——考えてくれた。対策を——」
「それは——玲が」
「奥さんと、二人でだろ」
佐々木は笑った。
「いい夫婦だな」
柊は少し照れた。
「ありがとうございます——」
◇
その夜、柊と玲は帰宅した。
「今日——うまくいったね」
「ああ」
「交流会——定期的に開催しよう」
「そうだな。残響たちも——望んでる」
玲はソファに座った。
「柊——」
「何?」
「残響たちの気持ち——少し、わかった気がする」
「どういう意味?」
「『帰りたい』という感覚——孤独から来てるのかもしれない」
「孤独——」
「遺族が来なくなって——一人になって。そうすると——どこかに帰りたくなる」
玲は天井を見上げた。
「人間も——同じかもしれない」
「同じ?」
「孤独になると——帰りたくなる。どこかに」
「……」
「家とか、故郷とか。大切な人のところとか」
柊は玲を見つめた。
「玲——」
「だから——残響にも、帰る場所が必要なのかもしれない」
「帰る場所——」
「遺族との繋がり。仲間との繋がり。そういう——帰る場所が」
柊は頷いた。
「俺たちは——その場所を、作ってるんだな」
「そう。残響たちが——帰れる場所を」
二人は——しばらく、黙って座っていた。
残響たちのために——できることを、考えながら。




