第65話「対策会議」
緊急対策会議が招集された。
桜の園の上層部、残響管理局の担当者、そして柊と玲。
◇
「状況を説明してください」
沢渡が言った。
「Cブロックを中心に——異変が起きています」
玲が報告した。
「活性化した残響は——全員、『帰りたい』という感覚を報告しています」
「帰りたい——どこに?」
「わかりません。本人たちも——わからないと言っています」
会議室がざわついた。
「原因は?」
「仮説ですが——存在意義の喪失」
「存在意義——?」
「残響は——遺族と会うことで、存在の意味を感じています。でも、面会が減ると——」
玲はデータを表示した。
「活性化した残響の面会頻度は——平均して、半年前の三分の一以下になっています」
「面会が減ったから——存在意義を見失った?」
「そう考えています」
沢渡は眉をひそめた。
「対策は?」
「いくつか、考えられます」
玲は資料を配った。
「一つ目——遺族への働きかけ。面会頻度を上げてもらう」
「それは——強制できない」
「わかっています。でも、促すことはできます」
「二つ目は?」
「残響同士のコミュニティ強化。残響が——互いに支え合えるようにする」
「具体的には?」
「VR空間内での交流イベント。残響同士が——顔を合わせる機会を増やす」
沢渡は頷いた。
「三つ目は?」
「最後の手段ですが——成仏の希望に、迅速に対応する」
「成仏——」
「残響が——存在を続けることを望まないなら、その意思を尊重する」
会議室が静まり返った。
「それは——最後の手段だ」
「わかっています。だから——まずは、一つ目と二つ目を試したい」
沢渡は考え込んだ。
「わかった。やってみろ」
◇
会議後、柊と玲は二人で話し合った。
「本当に——うまくいくかな」
「わからない。でも——やるしかない」
玲は窓の外を見た。
「残響たちは——今、不安定な状態にある。放置すれば——」
「ああ——」
「柊——」
「何?」
「お母さんの残響も——同じだったのかな」
柊は少し考えた。
「同じ——?」
「『私はここにいない』と言った時。存在の意味を——見失ってたのかな」
「……多分」
「でも——お母さんは、柊がいたから。毎日、会いに来てくれる柊が」
「ああ——」
「だから——真実を知った後も、存在を続けられた」
玲は柊を見た。
「遺族との繋がりが——残響にとって、どれだけ大切か」
「……」
「今回の異変は——それを、改めて示してる」
柊は頷いた。
「遺族に——働きかけよう。面会の大切さを——伝えよう」
「ええ」
「残響たちも——支え合えるようにしよう」
「そうね」
二人は——顔を見合わせた。
「一緒に——頑張ろう」
「ああ——」
新たな課題が——目の前にあった。




