第58話「衣装」
二月。結婚式まで、あと二ヶ月。
衣装合わせの日が来た。
◇
ブライダルショップ。
玲はドレスを、柊はタキシードを選ぶ。
「玲——どれにする?」
「迷ってるの。これと——これ」
玲は二着のドレスを指差した。
純白のAライン。そして、淡いピンクのマーメイドライン。
「着てみれば?」
「うん」
玲は試着室に入った。
柊は——待合室で、待っていた。
◇
しばらくして、玲が出てきた。
純白のAライン。シンプルだが、上品なデザイン。
「どう——?」
「きれいだ——」
柊は言葉を失った。
玲が——こんなにきれいに見えたのは、初めてだった。
「似合ってる?」
「似合ってる。すごく」
玲は鏡を見つめた。
「私——ウェディングドレス、初めて着た」
「そりゃ——そうだろ」
「夢みたい——」
玲の目が潤んだ。
「柊と——結婚するんだって、実感がわいてきた」
「俺も——」
柊は玲に近づいた。
「玲——きれいだ」
「ありがとう——」
「このドレスに——決めよう」
「いいの? もう一着——」
「いい。これが——一番、似合ってる」
玲は微笑んだ。
「わかった。じゃあ——これにする」
◇
柊もタキシードを試着した。
黒のクラシックなデザイン。
「どう——?」
柊が試着室から出ると、玲が目を丸くした。
「かっこいい——」
「本当に?」
「本当。柊——タキシード、似合うね」
「そうかな——」
「うん。すごく」
玲は柊の周りを回った。
「完璧。これにしよう」
「わかった」
◇
衣装が決まった後、二人はカフェで休憩した。
「色々——決まってきたね」
「ああ」
「式場、衣装、招待客——」
「あとは——当日を待つだけだな」
「楽しみ——」
玲はコーヒーを飲みながら言った。
「でも——少し、緊張する」
「緊張?」
「だって——人生で一度きりのことだから」
「そうだな——」
「失敗したくない」
柊は玲の手を取った。
「失敗なんて——しないよ」
「どうして——」
「俺たちなら——大丈夫。何があっても」
「柊——」
「一緒に——乗り越えよう。何があっても」
玲の目から、涙がこぼれた。
「ありがとう——」
「お礼は——いらないよ」
「でも——言いたい」
玲は柊を見つめた。
「柊と——結婚できて、幸せ」
「俺も——」
二人は——しばらく、手を繋いだまま、カフェにいた。
◇
帰り道。
「お母さんも——ウェディングドレス、着たのかな」
玲が言った。
「ああ。写真——あったよ」
「見た?」
「見た。母さん——きれいだった」
柊は空を見上げた。
「父さんも——タキシード、着てた。二人とも——幸せそうだった」
「……」
「俺たちも——あんな風になれるかな」
「なれるよ。きっと」
玲は柊の腕に、自分の腕を絡めた。
「私たちは——お父さんとお母さんの分も、幸せになるの」
「そうだな——」
「だから——絶対、うまくいく」
柊は微笑んだ。
「ありがとう、玲」
「どういたしまして」
二人は——冬の街を、歩いていった。




