第118話「遺産」
柊は——自分の仕事について、考えていた。
◇
二十年間——残響庭園で働いてきた。
母の残響に会い始めてから——すべてが始まった。
そして——今、ここにいる。
「俺は——何を残せたのだろう」
柊は呟いた。
◇
残響庭園は——社会に定着していた。
多くの人が——残響と繋がっていた。
「常在の繋がり」システムは——残響たちに安らぎを与えていた。
成仏を選ぶ残響も——穏やかに旅立っていた。
「うまく——いってるな」
柊は思った。
◇
しかし——課題もあった。
技術は進歩し続ける。
社会も変化し続ける。
残響庭園も——変わっていかなければならない。
「次の世代に——何を伝えるか」
柊は考えた。
技術、知識、経験——それらは、伝えられる。
しかし——それだけでは足りない。
「心を——伝えたい」
残響を愛する心。
繋がりを大切にする心。
それを——次の世代に、伝えたい。
◇
「水無瀬さん——」
若いスタッフが声をかけてきた。
「何だ——」
「相談があるんですが——」
「聞こう——」
若者は——残響との接し方について、悩んでいた。
「うまく——話せないんです」
「どういうこと——」
「残響は——データだと、頭ではわかってます。でも——」
「でも?」
「目の前にいると——人間と同じに見えて。どう接していいか——」
柊は微笑んだ。
「それでいいんだ——」
「え——」
「人間と同じに見える。それが——正しい」
「……」
「残響は——データだ。でも、同時に——大切な存在だ」
柊は若者を見つめた。
「お前が感じている戸惑い——それは、大切なことだ」
「大切——」
「残響を——ただのデータとして扱わない。それが——大切」
若者は——少し、ほっとした表情になった。
「ありがとうございます——」
「いつでも——相談に来い」
「はい——」
◇
夜、柊は玲と話した。
「今日——若いスタッフと話した」
「どうだった——」
「悩んでた。残響との接し方」
「柊も——最初は悩んでたものね」
「そうだな——」
柊は笑った。
「俺も——悩んでた。母さんの残響と、どう向き合えばいいか」
「今は——」
「今は——わかる。繋がりを——大切にすればいい」
玲は頷いた。
「それを——次の世代に、伝えていけばいい」
「ああ——」
「柊の遺産——それは、心だと思う」
「心——」
「残響を愛する心。繋がりを大切にする心」
柊は——深く頷いた。
「そうだな。それを——伝えていく」




