第117話「供養」
ある年の盆——柊は、墓参りに行った。
◇
家族の墓——父と母が、眠っている。
柊、玲、陽向の三人で——訪れた。
「おじいちゃんと——おばあちゃんの墓?」
陽向が尋ねた。
「そうだ——」
「私——会ったことない」
「そうだな——」
柊は墓の前に立った。
「父さん、母さん——来たよ」
◇
墓を清め——花を供えた。
線香を——焚いた。
「父さん——」
柊は語りかけた。
「残響庭園——順調だよ。お前の遺志を——継いでる」
「……」
「答えも——見つけた。残響たちの帰る場所」
「繋がりの中——それが、答えだ」
柊は目を閉じた。
「お前が——見つけられなかった答えを、俺が見つけた」
◇
「母さん——」
柊は続けた。
「俺——結婚したよ。子どももできた」
「陽向——元気に育ってる」
「母さんに——会わせたかったな」
柊の目に——涙が浮かんだ。
「でも——わかってる。母さんは——どこかで、見守ってくれてる」
「だから——大丈夫だ」
◇
陽向が——柊の手を握った。
「パパ——泣いてる」
「ああ——」
「おじいちゃんと——おばあちゃんのこと、思い出してるの?」
「そうだな——」
「どんな人だったの——」
柊は考えた。
「父さんは——研究熱心な人だった。残響技術を——作った人」
「すごい——」
「母さんは——優しい人だった。いつも——俺を、応援してくれた」
陽向は墓を見つめた。
「会いたかったな——」
「そうか——」
「うん。パパの——お父さんとお母さんだもん」
柊は陽向を抱きしめた。
「二人とも——きっと、陽向のこと、喜んでるよ」
「本当——?」
「本当だ——」
◇
墓参りを終えて——帰途についた。
「柊——」
玲が言った。
「何——」
「供養——って、大切だね」
「ああ——」
「死んだ人を——思い出す。繋がりを——確認する」
「そうだな——」
「残響がいてもいなくても——供養は必要なのかもしれない」
柊は頷いた。
「残響は——技術的な繋がり」
「供養は——心の繋がり」
「両方——大切だな」
◇
帰り道——柊は考えていた。
残響技術があっても——供養は必要だ。
心で——繋がること。
それが——供養の意味なのかもしれない。
「父さん、母さん——」
柊は心の中で呟いた。
「また——来るよ」
空には——夏の雲が、流れていた。




