第116話「二十年」
月日は——さらに流れた。
柊が残響庭園で働き始めて——二十年が経った。
◇
柊は——四十六歳になっていた。
陽向は——十一歳。
玲も——四十六歳。
「あっという間だったな——」
柊が呟いた。
「本当ね——」
玲が答えた。
◇
残響庭園は——さらに発展していた。
全国に——複数の施設ができていた。
柊は——その統括責任者になっていた。
「水無瀬さん——新しい施設の準備、整いました」
田所が報告した。
「そうか。視察に行こう——」
「はい——」
田所も——五十代になっていた。
長い付き合いだった。
◇
「田所——」
「はい——」
「お前と——二十年、一緒に働いてきたな」
「そうですね——」
「ありがとう——」
田所は驚いた顔をした。
「急に——どうしたんですか」
「いや。ふと——思っただけだ」
「こちらこそ——ありがとうございます」
田所は微笑んだ。
「水無瀬さんと——働けて、よかったです」
◇
陽向は——成長していた。
中学生になる手前——少し、反抗期が始まっていた。
「パパ——うるさい」
「勉強は——したのか?」
「したよ——」
「本当か——」
「本当だって——」
陽向は——部屋に籠もっていった。
柊は——苦笑した。
「反抗期——か」
「仕方ないわよ——」
玲が言った。
「成長の証——」
「そうだな——」
◇
しかし——陽向は、残響庭園には興味を持っていた。
「パパ——仕事場、見せて」
「いいよ——」
休日に——陽向を連れて、桜の園に行った。
「ここが——残響庭園」
「すごい——」
陽向は——目を輝かせた。
「みゆちゃんが——いたところ」
「そうだ——」
「パパ——ここで、何してるの?」
「残響たちと——話をしたり。システムを——管理したり」
「残響って——どんな感じ?」
「人間と——同じだよ。笑ったり、泣いたり」
陽向は考え込んだ。
「会ってみたい——」
「会わせてやろうか——」
「うん——」
◇
柊は——陽向を、残響たちに会わせた。
「こんにちは——」
陽向が挨拶した。
「こんにちは——水無瀬さんの娘さん?」
「はい——陽向です」
「可愛いね——」
残響たちは——陽向を歓迎した。
陽向は——残響たちと、楽しそうに話していた。
「パパ——」
帰り道、陽向が言った。
「何だ——」
「残響って——普通の人みたい」
「そうだろ——」
「私——将来、パパみたいな仕事、したいかも」
柊は——嬉しくなった。
「そうか——」
「まだ——わからないけど」
「ゆっくり——考えればいい」
陽向は微笑んだ。
「うん——」
次の世代が——育っていた。




