第115話「陽向の問い」
陽向が——六歳になった。
小学校に——入学した。
◇
「パパ——」
ある日、陽向が柊に尋ねた。
「何だ——」
「パパの仕事——何してるの?」
柊は少し考えた。
「残響庭園で——働いてる」
「ざんきょう——みゆちゃんがいたところ?」
「そうだ——」
「何してるの——?」
柊は陽向を膝に乗せた。
「死んだ人と——話ができるようにしてる」
「しんだひと——?」
「ああ。みゆちゃんみたいに——」
陽向は首を傾げた。
「しんだひとと——はなせるの?」
「できるんだ。特別な技術で——」
◇
「パパ——」
陽向がまた尋ねた。
「何だ——」
「おばあちゃんにも——会える?」
柊は言葉に詰まった。
「おばあちゃん——」
「パパのおかあさん——」
柊は首を振った。
「おばあちゃんは——もう、いないんだ」
「いない——?」
「成仏——したんだ」
「せいぶつ——?」
柊は深呼吸した。
「みゆちゃんも——成仏しただろ」
「うん——」
「おばあちゃんも——同じだ。もう——会えない」
陽向は悲しそうな顔をした。
「会えないの——?」
「直接は——会えない。でも——」
柊は陽向を抱きしめた。
「心の中に——いるよ」
◇
「パパ——」
「何だ——」
「パパも——いつか、しんじゃうの?」
柊は——一瞬、黙った。
「いつか——そうなる」
「やだ——」
陽向が泣き始めた。
「パパ——しんじゃ、やだ」
「大丈夫——」
柊は陽向を抱きしめた。
「まだ——当分、死なないよ」
「ほんと——?」
「本当だ。陽向が——大きくなるまで、ずっと一緒だ」
陽向は——柊にしがみついた。
「やくそく——」
「約束する——」
◇
夜、玲と話をした。
「陽向が——死について、聞いてきた」
「そう——」
「怖がってた——」
「当然よね——」
玲は溜息をついた。
「六歳——死を意識し始める年齢」
「俺——うまく答えられたかな」
「大丈夫よ——」
玲は微笑んだ。
「柊は——いつも、誠実に答えてる」
「でも——」
「陽向は——少しずつ、理解していく。焦らなくていい」
柊は頷いた。
「そうだな——」
「私たちは——そばにいればいい」
「ああ——」
柊は窓の外を見た。
陽向が——成長していく。
死について——少しずつ、学んでいく。
それは——自然なことだった。




