第113話「講演」
柊は——講演を行うことにした。
◇
残響技術シンポジウム——全国から、研究者や遺族が集まるイベント。
柊は——基調講演を依頼された。
「テーマは——『残響の帰る場所』です」
主催者が説明した。
「水無瀬さんの——経験を、お聞かせください」
「わかりました——」
◇
講演の日が——やってきた。
会場には——数百人の聴衆がいた。
柊は——壇上に立った。
「本日は——お集まりいただき、ありがとうございます」
柊は深呼吸した。
「私は——残響庭園で、十五年間、働いてきました」
「その経験から——お話しさせていただきます」
◇
「残響は——何のために存在するのか」
柊は問いかけた。
「遺族のため——それが、一般的な答えです」
「しかし——それだけではありません」
会場が静まり返った。
「残響は——繋がりを求めています」
「遺族との繋がり。残響同士の繋がり。そして——より大きな繋がり」
柊はスクリーンに資料を映した。
「私たちは——『常在の繋がり』というシステムを開発しました」
「これにより——残響たちは、常に繋がりを感じられるようになりました」
「結果——『帰りたい』という訴えが、激減しました」
◇
「残響の帰る場所——それは、繋がりの中にあります」
柊は続けた。
「孤独ではなく——繋がりの中に」
「生きている間も——成仏した後も」
「繋がりは——続きます」
柊は聴衆を見渡した。
「私の母も——残響でした」
「彼女は——成仏しました。しかし——」
柊の声が震えた。
「彼女との繋がりは——今も、続いています」
「私の心の中に——彼女はいます」
「それが——帰る場所なのです」
◇
講演が終わった。
会場から——拍手が起きた。
多くの人が——涙を流していた。
「素晴らしい——講演でした」
主催者が言った。
「ありがとうございます——」
「水無瀬さんの言葉——心に響きました」
◇
講演後——多くの人が、柊に声をかけてきた。
「私も——母の残響と会っています」
「残響との繋がり——大切にしたいと思いました」
「ありがとうございます——」
柊は——一人一人と、話をした。
◇
帰り道——玲が言った。
「良い講演だったわ——」
「そうかな——」
「みんな——感動してた」
「伝わったかな——」
「伝わったわよ——」
玲は柊の手を握った。
「柊の言葉は——本物だから」
「本物——」
「経験に裏打ちされた——本物の言葉」
柊は微笑んだ。
「ありがとう——」
空には——夕日が沈んでいた。




