第112話「答え」
ある夜——柊は、ふと気づいた。
◇
父の遺言——「残響たちが、どこに帰ればいいのか。その答えを、見つけてほしい」
十五年間——考え続けてきた問いだった。
そして——今、答えが見えた気がした。
「玲——」
「何——」
「答えが——わかった気がする」
「答え——?」
「残響たちの——帰る場所」
玲は柊を見つめた。
「何——」
「繋がり——だ」
◇
柊は——考えを整理した。
「残響たちは——孤独だった」
「ええ——」
「遺族との面会が減ると——存在意義を見失った」
「そう——」
「だから——『帰りたい』と言い始めた」
柊は窓の外を見た。
「でも——本当に帰りたかったのは、場所じゃない」
「じゃあ——」
「繋がり——だ。誰かと繋がっている感覚」
玲は頷いた。
「だから——『常在の繋がり』システムが、効果があった」
「そう。残響同士が繋がることで——孤独が和らいだ」
「帰る場所——それは」
「繋がりの中——だ」
◇
「でも——」
玲が言った。
「成仏する残響は——繋がりを手放す」
「そうだ。でも——」
柊は考え込んだ。
「成仏は——繋がりの終わりじゃない」
「どういう意味——」
「美優は——成仏する時、言っていた。『また、どこかで会おう』と」
「……」
「彼女は——繋がりが続くと、信じていた。形を変えて」
玲は黙って聞いていた。
「残響の帰る場所——それは、繋がりの中にある」
「生きている間も——」
「そう。そして——成仏した後も」
「繋がりは——続く」
「ああ——」
◇
柊は——父のことを思った。
父は——この答えに、辿り着けなかった。
しかし——方向性は、示していた。
「父さん——」
柊は呟いた。
「俺——答えを見つけたよ」
返事はなかった。
しかし——どこかで、父が微笑んでいる気がした。
◇
「柊——」
玲が言った。
「その答え——みんなに、伝えたら?」
「みんなに——」
「残響たちに。遺族に。社会に」
「伝えられるかな——」
「伝えられるわよ——」
玲は微笑んだ。
「柊は——ずっと、実践してきた」
「実践——」
「残響たちと繋がり続けてきた。美優とも——最後まで」
「……」
「だから——言葉にできる」
柊は頷いた。
「そうだな——」
「伝えよう。残響たちの——帰る場所を」
「ああ——」
柊は——決意した。




