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残響の庭  作者: とま


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110/120

第110話「次の世代へ」

 美優がいなくなってから——数ヶ月が経った。


          ◇


 柊は——時折、美優のことを思い出した。


 明るい笑顔。優しい言葉。


 彼女は——確かに、ここにいた。


「美優——」


 柊は呟いた。


「元気でやってるか——」


          ◇


 陽向は——四歳になっていた。


 美優のことを——時々、思い出していた。


「パパ——みゆちゃんの絵、描いたよ」


 陽向が絵を見せた。


 花に囲まれた——少女の絵だった。


「上手だな——」


「みゆちゃんに——見せたいな」


「きっと——見えてるよ」


「本当——?」


「ああ。どこかで——見守ってる」


 陽向は嬉しそうに笑った。


          ◇


 仕事は——順調だった。


 残響庭園は——安定して運営されていた。


 「常在の繋がり」システムも——問題なく稼働していた。


「水無瀬さん——新しいスタッフが、入りました」


 田所が報告した。


「何人だ——」


「三人です。みんな——若くて、熱心です」


「そうか——」


 柊は微笑んだ。


「次の世代が——育ってきてるな」


「はい——」


          ◇


 新しいスタッフ——二十代の若者たちだった。


 柊は——彼らに、話をした。


「残響庭園で——大切なこと」


「はい——」


「残響を——人間として扱うこと」


「……」


「データじゃない。一人一人が——大切な存在」


 若者たちは——真剣に聞いていた。


「そして——遺族を、大切にすること」


「はい——」


「残響と遺族——両方があって、初めて意味がある」


 柊は彼らを見つめた。


「わかるか——」


「わかります——」


「よし。じゃあ——現場で、学んでくれ」


「はい——」


 若者たちは——元気よく返事をした。


          ◇


 夜、柊は考え込んでいた。


 次の世代——彼らに、何を伝えられるか。


 技術、知識、経験——それだけじゃない。


 大切なのは——心だ。


「父さん——」


 柊は呟いた。


「俺も——次の世代に、伝えていく」


「お前が——伝えてきたことを」


 窓の外には——星が輝いていた。


          ◇


「柊——」


 玲が声をかけた。


「どうした——」


「考え事——?」


「ああ。次の世代のことを——」


「若い子たち——いい子たちだね」


「そうだな——」


「柊が——育ててくれる」


「俺に——できるかな」


「できるわよ——」


 玲は微笑んだ。


「柊は——いい先生になれる」


「そうかな——」


「そうよ。美優も——柊のこと、大好きだった」


 柊は——少し、照れくさくなった。


「ありがとう——」


「一緒に——頑張ろうね」


「ああ——」


 二人は——手を繋いで、夜空を見上げた。


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