第109話「美優の成仏」
その日が——やってきた。
◇
美優の成仏式には——多くの人が集まった。
父親、継母、弟。
柊、玲、陽向。
そして——美優と親しかった残響たち。
「みんな——来てくれたんだ」
美優は嬉しそうだった。
「当たり前だ——」
柊が言った。
「最後まで——見届ける」
◇
式の前に——美優は、一人一人と話をした。
「お父さん——」
「美優——」
父親は涙を流していた。
「ありがとう。十年間——会いに来てくれて」
「美優——俺のほうこそ」
「新しい家族を——大切にしてね」
「ああ——」
「私——お父さんの娘で、幸せだった」
父親は——美優を抱きしめた。
「美優——愛してる」
「私も——愛してる」
◇
「陽向ちゃん——」
美優が陽向に言った。
「みゆちゃん——」
陽向は——不安そうな顔をしていた。
「みゆちゃん——いなくなっちゃうの?」
「うん。でも——大丈夫」
美優は微笑んだ。
「私——ずっと、陽向ちゃんのこと、見守ってるから」
「見えないのに——?」
「見えなくても——そばにいるよ」
陽向は——美優を抱きしめた。
「みゆちゃん——だいすき」
「私も——大好き」
◇
「柊おじさん——」
美優が柊の前に立った。
「美優——」
「最後まで——ありがとう」
「俺こそ——」
「柊おじさんは——私の、大切な人」
美優は涙を流した。
「いつか——また、会おうね」
「ああ——約束する」
柊は——美優を抱きしめた。
「元気で——行けよ」
「うん——」
◇
成仏プロトコルが——起動された。
美優の姿が——光に包まれ始めた。
「みんな——ありがとう」
美優は手を振った。
「私——幸せだった」
光が——強くなっていく。
「さようなら——」
美優は微笑んだ。
「また——どこかで」
彼女の姿が——消えていった。
◇
式の後——静寂が広がった。
誰もが——涙を流していた。
しかし——悲しみだけではなかった。
どこか——穏やかな空気もあった。
「美優——幸せそうだったな」
柊が呟いた。
「ええ——」
玲が答えた。
「最後まで——笑ってた」
「ああ——」
陽向が——柊の手を握った。
「パパ——みゆちゃんは、どこに行ったの?」
柊は考えた。
「わからない。でも——きっと、いい場所だ」
「いい場所——」
「ああ。みんなが——待ってる場所」
陽向は頷いた。
「じゃあ——みゆちゃんは、さびしくないね」
「そうだな——」
柊は空を見上げた。
美優が——どこかで笑っている気がした。




