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残響の庭  作者: とま


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106/120

第106話「沢渡の引退」

 ある日——沢渡から、話があると言われた。


          ◇


「水無瀬——座ってくれ」


 沢渡の表情は——穏やかだった。


「何ですか——」


「俺——来年で、引退することにした」


 柊は——驚いた。


「引退——」


「もう——六十五だ。そろそろ、若い奴に任せようと思ってな」


「……」


「後任は——お前だ」


 柊は言葉を失った。


「俺——ですか」


「ああ。残響庭園の——責任者を、お前に任せたい」


          ◇


 柊は——考え込んだ。


 責任者——それは、重い役職だった。


 残響庭園全体を——統括する立場。


「俺に——できますか」


「できる。お前なら——」


 沢渡は柊を見つめた。


「十二年——見てきた。お前は——この仕事に、向いてる」


「……」


「残響たちを——本当に、大切にしている。それが——一番、大事なことだ」


 柊は——黙って聞いていた。


「技術も——経験もある。何より——情熱がある」


「沢渡さん——」


「頼む——水無瀬」


 沢渡は頭を下げた。


「残響庭園を——頼む」


          ◇


 柊は——玲に相談した。


「責任者——か」


 玲が言った。


「俺に——できると思うか」


「できるわよ——」


「本当に——」


「柊は——ずっと、この仕事を大切にしてきた」


 玲は微笑んだ。


「残響たちも——信頼してる。スタッフも——尊敬してる」


「……」


「だから——大丈夫」


 柊は——決意した。


「引き受ける——」


「よかった——」


「俺なりに——頑張る」


 玲は柊を抱きしめた。


「一緒に——頑張ろう」


「ありがとう——」


          ◇


 翌日——沢渡に返事をした。


「引き受けます——」


「そうか——よかった」


 沢渡は安堵した表情をした。


「一年かけて——引き継ぐ。心配するな」


「はい——」


「水無瀬——」


「何ですか——」


「お前は——お前の父親に、似てるな」


 柊は驚いた。


「父に——」


「ああ。研究への情熱、残響への愛情。同じだ」


「……」


「水無瀬蒼太は——俺の友人だった」


「知ってます——」


「彼が死んだ時——俺は、悔しかった。もっと——助けてやれなかったかって」


 沢渡の目に——涙が光った。


「でも——お前を見てると、思う。蒼太の意志は——ちゃんと、受け継がれてる」


「沢渡さん——」


「だから——安心して、任せられる」


 柊は——深く頭を下げた。


「ありがとうございます——」


          ◇


 新しい章が——始まろうとしていた。


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