第105話「陽向と美優」
陽向が——三歳になった。
言葉がしっかりしてきて——会話ができるようになっていた。
◇
「パパ——みゆちゃんに、会いたい」
陽向が言った。
「美優に——?」
「うん。みゆちゃん——元気?」
柊は微笑んだ。
「元気だよ——会いに行くか」
「うん——」
◇
VR空間にログインした。
美優が——待っていた。
「陽向ちゃん——」
「みゆちゃん——」
二人は——嬉しそうに挨拶した。
「大きくなったね——」
「うん。三さいに、なったの」
「すごい——」
美優は陽向を見つめた。
「可愛いなあ——」
◇
二人は——遊び始めた。
VR空間では——様々な遊びができた。
ボール遊び、かくれんぼ、お絵かき。
「みゆちゃん——上手」
「ありがとう——陽向ちゃんも上手だよ」
柊は——二人の様子を、見守っていた。
◇
「パパ——」
陽向が柊を呼んだ。
「何だ——」
「みゆちゃんは——どうして、ここにいるの?」
柊は——少し考えた。
「美優は——残響だから」
「ざんきょう——?」
「死んじゃった人が——ここにいるんだ」
陽向は首を傾げた。
「しんじゃった——?」
「ああ——」
「みゆちゃん——しんじゃったの?」
美優が——柊を見た。
柊は頷いた。
「そうだよ——」
美優が陽向に言った。
「私——前に、死んじゃったの。でも、ここにいる」
「どうして——」
「パパみたいな人が——私を、ここに残してくれたから」
陽向は——じっと美優を見つめた。
「みゆちゃん——かなしい?」
「時々——悲しいよ。でも、今は嬉しい」
「どうして——」
「陽向ちゃんに——会えるから」
陽向は——美優を抱きしめた。
「みゆちゃん——だいじょうぶ。ひなたが、いるよ」
美優は——涙を流した。
「ありがとう——」
◇
帰り道——柊は考えていた。
陽向は——死を理解し始めている。
でも——怖がってはいない。
自然なこととして——受け入れている。
「玲——」
夜、柊は玲に話した。
「陽向が——美優と、死について話してた」
「そう——」
「陽向は——怖がってなかった」
「子どもは——素直だからね」
玲は微笑んだ。
「死を——特別なこととは、思ってないのかもしれない」
「そうかもしれない——」
「美優がいることで——陽向は、自然に死を学んでるのね」
柊は頷いた。
「それが——いいことなのか、わからないけど」
「いいことだと——思うわ」
玲は柊の手を握った。
「死は——怖いことじゃない。自然なこと」
「ああ——」
「それを——陽向が学んでいる」
柊は——安心した。
陽向は——健やかに育っていた。




