第103話「繋がりの証明」
美優は——成仏を、保留にした。
◇
「柊おじさん——」
数日後、美優が声をかけてきた。
「どうした——」
「私——もう少し、ここにいることにした」
柊は——安堵した。
「そうか——」
「お父さんと——話して。まだ、やりたいことが、あるって思った」
「やりたいこと——」
「うん。陽向ちゃんに——会うこと」
柊は微笑んだ。
「約束してたな——」
「うん。約束——守ってね」
「もちろん——」
◇
陽向が——少し大きくなった。
首が据わり——笑うようになった。
「そろそろ——美優に会わせてもいいかな」
柊が玲に言った。
「大丈夫だと思う——」
「よし——」
◇
柊は——陽向を抱いて、VR空間にログインした。
美優が——待っていた。
「陽向ちゃん——」
美優の目が輝いた。
「可愛い——」
「だろ——」
柊は陽向を美優に見せた。
「触っていい——?」
「ああ——」
美優は——陽向の頬に触れた。
VR空間では——触感もシミュレートされていた。
「柔らかい——」
美優は嬉しそうだった。
「赤ちゃんって——こんなに柔らかいんだ」
「そうだよ——」
「私——赤ちゃんの時のこと、覚えてないけど。こんな感じだったのかな」
「たぶん——そうだと思う」
◇
陽向は——美優を見つめていた。
不思議そうな——目だった。
「陽向ちゃん——私のこと、見えてる?」
柊は頷いた。
「見えてると思う——」
「私——残響だけど。赤ちゃんには——見えるんだね」
「陽向には——違いなんて、わからないさ」
「そうだね——」
美優は微笑んだ。
「陽向ちゃん——私は、美優だよ。仲良くしようね」
陽向は——小さな声を上げた。
それは——返事のように聞こえた。
◇
「柊おじさん——」
美優が言った。
「何だ——」
「私——ここにいて、よかった」
「どういう意味——」
「陽向ちゃんに——会えた。新しい命に——触れられた」
美優の目に——涙が浮かんだ。
「私——死んじゃったけど。こうやって——新しい命と、繋がれる」
「美優——」
「それって——すごいことだと思う」
柊は頷いた。
「ああ——すごいことだ」
「だから——もう少し、頑張る。ここで——」
「よかった——」
◇
帰り道——柊は考えていた。
死者と生者の——繋がり。
美優と陽向——残響と赤ちゃん。
全く違う存在が——繋がることができる。
それが——残響技術の、本当の意味なのかもしれない。
「父さん——」
柊は呟いた。
「お前が作った技術は——正しかったよ」
空には——夕日が沈んでいた。




